失敗が許されない堅牢なシステムが求められ、複雑な承認プロセスが存在する金融業界の中で、長らくシステム開発を外部委託に頼ってきた横浜銀行。2023年ごろより、「アジリティを持って顧客体験を向上させる」ため銀行内部に内製開発部隊を立ち上げました。
正社員エンジニアがゼロの状態から、いかにしてモダンなアジャイル組織を作り上げたのか。従来型の組織・プロセスの壁の乗り越え方や「Findy Team+」を活用した開発プロセス改革の裏側について、リーダーの嵯峨野 憲作氏に伺いました。
プロフィール
嵯峨野 憲作さん 横浜銀行 ITソリューション部 プロダクトエンジニアリンググループ リーダー
SIerやベンチャー、大手メーカーと幅広い環境を経て、2023年に横浜銀行へ入行。スクラムマスターの経験を活かし、現在は開発統括兼エンジニアリングマネージャーとして、内製開発組織の立ち上げ、開発環境の整備を推進。
横浜銀行が挑む内製化の本質と、ビジネスを加速させる「アジリティ」

—— 本日はありがとうございます。まず、内製開発組織の体制やミッションを教えてください。
嵯峨野: 現在、横浜銀行の内製開発は、私が所属するプロダクトエンジニアリンググループで担っております。組織としては、エンジニアが12名、 プロジェクトマネージャーやローコード開発、インフラの担当者を含め、20名弱の体制です。
目指しているのは「銀行のドメイン知識を持ち、かつ高いスキルを備え、社内で頼られる組織」になることです。銀行としてアジリティを高めるべき領域や、顧客体験を向上すべき領域については、積極的に我々で内製開発をしていくことがミッションです。
—— 素敵なミッションですね。そもそも、横浜銀行が内製開発に踏み切った背景はなんだったのでしょうか。
嵯峨野: 最初のきっかけはコスト面でした。 従来は大手SIerへ外部委託しており、高い専門性や品質を提供いただいていた一方で、継続的に内製と外部委託の最適なバランスを模索する中で、「内製化も選択肢として検討すべきではないか」という声が上がったのが始まりです。
ただ、内製開発組織が発足したタイミングから私が強く発信していたのは、「コストは後からついてくるもので、最初は投資なんだ」ということでした。コスト削減だけを目的にしていると、本質を見失ってしまうと思っていたので。
—— 嵯峨野さんが考える内製化の「本質」とは何でしょうか。
嵯峨野: 一言で言うと「アジリティ(機敏さ)」です。外部委託では、開発途中の仕様変更に柔軟に対応しにくく、リリース後の改善サイクルを素早く回すことも難しい。
現在の金融業界において、ITによる差別化はビジネスそのものに直結しており、顧客へ価値を届けるスピードこそが競争力になります。
従来の外注体制における「リリースまでのタイムラグ」や「改善サイクルの回しづらさ」に限界を感じていたからこそ、アジリティを持って顧客体験を向上させる領域は、内製で進めるべきだという考えに至りました。
直面する「金融業界特有の壁」。顧客体験領域でスピードを追求する内製化戦略
—— 横浜銀行の内製化戦略を教えてください。今後、全てのシステムを内製化されていくのでしょうか?
嵯峨野: 内製開発で進める領域と、引き続き外部委託で進める領域は明確に区別しています。絶対に失敗が許されない「勘定系システム」は共同利用型の仕組みを採用していますので、従来通りウォーターフォールで確実に設計・実装していく。
一方で、アプリなどお客様が実際に触れる体験の領域は、内製でアジャイルに開発していく。この棲み分けが戦略の軸です。既存のコストメリットは活かしつつ、スピード感をもって成長させるべき領域に、内製の力を集中させていくイメージです。
—— 内製でアジャイル開発を進めていく上で、金融業界ならではの壁はありましたか。
嵯峨野:一番は、改善サイクルの回しづらさですね。 高い安全性や信頼性を担保するための、慎重で丁寧な業務プロセスが根付いており、リリースにいたるまでに複雑な手順や多層的な承認フローがたくさんある。こうした旧来の仕組みが、スピードを重視してサイクルを素早く回していくアジャイル開発と、そもそも相性が良くないというのが大きな壁でした。
—— 具体的に、どんな場面で壁にぶつかりましたか。
嵯峨野: 分かりやすいのが、生成AIツールを導入しようとした時です。前例のない取り組みには、厳格なセキュリティ確認や運用ルールの策定が求められます。
そこで、自由に試せるサンドボックス環境を構築したり、リスクを適切にコントロールしつつ審査を効率化する運用ルールを整備したりと、 開発者体験を向上させるような環境づくりを一つひとつ進めています。
内製開発組織の成果を、数字で証明したかった

—— 開発生産性の可視化に関心を持たれたきっかけを教えてください。
嵯峨野: 内製開発の開始に伴い、チームの評価方法を検討し始めたことがきっかけです。定量的な指標を探す中で「Four Keys」や「開発生産性」という言葉に出会いました。
同時に、「今の素晴らしいチームの状態を、経営層や上司に納得してもらえる形で証明したい」という想いもありました。内製化を継続・拡大するためには、成果の可視化が不可欠だと感じていたからです。
—— 最初から外部ツールを探されていたのでしょうか。
嵯峨野: 最初は内製を試みました。メンバーがGitLabのアクティビティからFour Keysに近い数値を算出するツールを作ってくれたのですが、一通り数値が出た後、「次に何をすべきか」で行き詰まってしまったんです。継続的な計測で動向は追えるものの、具体的なアクションにつながらないという課題に直面しました。
—— そこから外部ツールの検討に移られたわけですね。最終的にFindy Team+を選ばれた理由を教えてください。
嵯峨野: 海外サービスも検討しましたが、主に2つのハードルがありました。1つは言語の壁です。日本語非対応では現場への定着が難しく、経営層への報告時に毎回翻訳する手間が発生する。もう1つは、銀行ならではの厳しいセキュリティ審査です。海外企業との直接契約は、取引先チェックのハードルが非常に高いという問題がありました。
そのため国内サービスに絞ったのですが、開発生産性を高いクオリティで可視化できるのはFindy Team+しかなかったため、採用を決めました。
ネクストアクションまで伴走する、「Findy Team+」導入の決定打
—— 使い始めてからの印象はいかがでしたか。
嵯峨野: 導入後は、まずこれまでの開発状況を振り返りました。経験豊かなFindy Team+のカスタマーサクセス(CS)の方を交えてチームで数値を囲んだ際、想定より良いスコアが出ていたのは純粋に嬉しかったですね。
同時に、「レビューからプルリクエストの承認までの時間が長い」という具体的な課題にも直面しました。数値をフックに「確かにそうだ」とチーム全員が納得し、改善アクションの解像度が上がったんです。自作ツールでは「可視化」で終わっていたのに対し、Findy Team+では「次に何をすべきか」というネクストアクションまで肌感覚で掴めたことが、導入の決定打となりました。
さらに、Findy Team+は専任のCSが伴走してくれるため、他社事例の傾向を踏まえた最適なネクストアクションをいつでも相談できます。こうした体制があることも、大きな魅力に感じました。
—— 導入後、実際に使ってみてどのような価値を感じていますか。
嵯峨野: 改善活動の効果検証を「客観的」に行えるようになったことが、最大の価値です。
これまでは、主導した施策に対して「効果が出ていてほしい」という主観やバイアスがどうしても入りがちでした。それを定量的な数字で冷静に評価できるようになったのは大きな変化です。
試行錯誤のノイズを減らし、最適な開発プロセスを「最短距離」で模索できるようになりました。経営層へ成果を証明しながら、自律的な改善サイクルを回すための基盤が整ったと感じています。

「より良いやり方」を、一緒に模索できる仲間へ
—— 今の取り組みを踏まえ、直近で新しいチャレンジをされる予定はありますか?
嵯峨野: AI駆動開発です。今、少人数でパイロットプロジェクトとして取り組んでいます。
何がベストな方法かはまだ模索中なんですが、そうやってチームで議論しながら新しい時代の開発プロセスを探っていくこと自体が、今のフェーズの面白さだと思っています。
また、AI駆動開発は通常のスクラム開発とは進め方が大きく異なるため、開発サイクル自体も必然的に変化していくはずです。そうした新しい開発のあり方が、今後Findy Team+上でどのように可視化されていくのか、非常に楽しみにしています。
—— 楽しみですね。ぜひ、可視化や組織改善に取り組む他社のエンジニア・開発組織の方へメッセージをいただけますか。
嵯峨野: 最初から完璧な指標の設計や運用を目指す必要はない、と考えています。まずは計測を始めてみて、そのデータをもとにチーム内で会話を重ねる。そうした一歩からスタートすることが、何よりも大切ではないでしょうか。
数字はときに独り歩きしてしまうこともありますが、データはあくまで「会話のきっかけ」として捉えてみてください。そこから生まれるチーム内の議論や新たな気づきこそが、可視化がもたらす本当の価値だと信じています。
—— 最後に、横浜銀行にご興味をお持ちの方へメッセージをお願いします!
嵯峨野: 「銀行だからこうあるべき」「銀行だから硬い」といった固定観念にとらわれず、より良いやり方を一緒に模索するのが好きな方と働きたいと思っています。技術力ももちろん大事なんですが、それ以上に、チームで協力しながら課題を解決していく姿勢を大切にしているチームです。
金融とテクノロジーという特殊な分野ではありますが、地域社会に貢献できる仕事でもあります。プロダクトを一緒に作りたい、地域に貢献したいという方がいれば、ぜひご応募いただけると嬉しいです。

※経営と開発現場をつなぐAI時代の開発資本プラットフォーム「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます
※株式会社横浜銀行の採用・選考にご興味をお持ちの方は、以下より詳細をご確認くださいませ