開発組織のAI活用実態調査から見える、市場全体とAI活用先進層の大きな差とは?

AI駆動開発やハーネスエンジニアリングといった言葉が次々に登場するほど、ソフトウェア開発におけるAI活用のトレンドは目まぐるしく変化しています。AIを業務で日常的に使っているエンジニアも、すでに珍しくありません。ただし、その活用がどこまで進んでいるかは、個人や組織によって差が大きい状況です。

また、「日本は他の先進国と比べてAI活用が遅れている」という論調もメディアでは度々見かけます。ただし、実際の開発現場でAI活用がどこまで進んでいるのかについての客観的なデータは現状多くありません。

Findyでは、開発組織におけるAI活用の実態と技術・概念のトレンドを明らかにするため、ソフトウェア開発組織に関わる方を対象に市場調査を実施しました。同時に、開発状況やAI活用状況をデータで可視化するAI時代の開発資本プラットフォーム「Findy Team+」の導入企業ユーザー175名を対象とした調査も実施しました。

これらの調査の結果、「経営と開発現場をつなぐ AI時代の開発資本プラットフォーム Findy Team+」導入企業のユーザーは日常的にAI活用に取り組んでいることが分かりました。

本記事では、Findy Team+ユーザー層を「AI活用先進層」と位置づけ、現状の国内の開発組織の状況を示す市場調査の結果と比較しながら、開発組織におけるAI活用の現在地と、開発組織が次に取り組むべき点を明らかにしていきます。

調査で見えてきたこと

まずは、今回の調査を通して見えてきたことについて、市場調査からはAIを日常的に使う人自体はすでに多数派になっていることが分かりました。一方で、その活用が実装やコードレビューといった開発の中核工程まで届いている組織はまだ限られているようです。個人としてAI活用していることと、チームや組織として十分にAI活用が出来ていることとの間には未だ距離があり、道半ばという状況が見えてきました。

調査では、チームや組織でのAI活用の現状と課題、そしてAI活用先進層はそれをどう乗り越えているのかについて、市場調査とAI活用先進層の比較を通じて確認していきます。

個人のAI活用状況

まずは個人単位のAI活用状況から見ていきます。

日常業務でのAI活用は7割弱

自身の現在のAI活用状況(市場調査)
図1 自身の現在のAI活用状況(市場調査)

自身のAI活用状況について、「AIを日常業務の中で継続的に使っている」に「当てはまる」または「やや当てはまる」と回答した人の割合は、市場調査全体で68.5%でした。そのため、個人での日常的なAIの利用という点では、すでに多数派に達しています。

一方、「用途に応じてAIへの指示や使い方を工夫している」への回答は63.0%、「複数のAIツールや機能を使い分けている」への回答は51.9%となり、日常的な利用より一歩進んだ活用を示す項目ほど回答率が下がっています。これらの結果から、AIを業務の中で何らかの形で使えている段階と使いこなしている段階とが混在している状況であることがわかりました。

立場によって活用率に差

自身の現在のAI活用状況「AIを日常業務の中で継続的に使っている」【立場別】(市場調査)
図2 自身の現在のAI活用状況「AIを日常業務の中で継続的に使っている」【立場別】(市場調査)

市場調査で、「AIを日常業務の中で継続的に使っている」への回答を立場別に見ると、リーダー層以上で「当てはまる」または「やや当てはまる」と回答した人の割合は75.2%、専門職・エキスパートが72.2%でした。これに対して一般社員・その他は58.6%にとどまり、立場によって10ポイント以上の差が生じています。

マネジメント層や専門職層ではAI活用が先行する一方、一般社員層への広がりは相対的に遅れていることが明らかになりました。この差の解消が、AI活用を組織全体に広げるうえでの一つの課題になります。

AI活用先進層は個人利用ほぼ100%、立場差はほぼ消失

自身の現在のAI活用状況(ユーザー調査)
図3 自身の現在のAI活用状況(ユーザー調査)
自身の現在のAI活用状況「AIを日常業務の中で継続的に使っている」【立場別】(ユーザー調査)
図4 自身の現在のAI活用状況「AIを日常業務の中で継続的に使っている」【立場別】(ユーザー調査)

Findy Team+導入企業のユーザーをAI活用先進層とし、これらの層における「AIを日常業務の中で継続的に使っている」への回答は99.4%に達しました。市場調査との差は30.9ポイントとなり、個人単位のAI活用では既に大きな開きとなります。

その他、「用途に応じてAIへの指示や使い方を工夫している」でも27.8ポイント、「複数のAIツールや機能を使い分けている」でも21.8ポイント、「自分用のテンプレートや定型手順を持っている」でも15.6ポイント、AI活用先進層が市場調査を上回る結果となりました。

AI活用先進層では、立場別に見ても、リーダー層以上、専門職・エキスパート、一般社員・その他のいずれもほぼ100%に達しており、市場調査で見られたような立場による差はほとんど見られません。AI活用先進層では、役割を問わず日常業務でのAI活用が高い水準で浸透している状況が分かります。

個人の活用がチームへの波及実感につながっていない課題も

「自分のAI活用が周囲やチームにも影響を与えている」に肯定的な回答をした人の割合は、AI活用先進層で54.9%、市場調査で55.4%となり、その差は0.5ポイントと両者でほぼ同水準でした。

個人でのAI活用状況では30ポイント前後の大きな差が見られた一方で、チームへの波及実感については差があまりないという結果はほとんど残っていません。この結果から、AIの使い方が個人の中で洗練されていくことと、その効果が周囲に波及していくことでは、必ずしも一致しないという結果が見えてきました。

開発チームでのAI活用状況

ここまで、個人のAI活用について見てきましたが、チーム全体で見たときのAI活用状況はどうなっているでしょうか。

チーム全体のAI活用状況

所属する開発チームのAI活用状況(市場調査)
図5 所属する開発チームのAI活用状況(市場調査)

所属する開発チームのAI活用状況について尋ねたところ、「AIを日常業務で活用するメンバーが一部の人だけでなく一定数いる」に「当てはまる」または「やや当てはまる」と回答した割合は66.9%で、全6つの項目の中で最も高い結果でした。

一方、「AI活用に必要なツールや環境が整っている」への回答は52.0%にとどまり、6項目の中で最も低い結果でした。そのうち「とても当てはまる」と回答した割合は15.1%で、環境整備が活用の広がりに対して十分ではない実情が見えてきました。

チーム規模別で見る環境整備の差

所属する開発チームのAI活用状況「AI活用に必要なツールや環境が整っている」【開発チーム人数別】(市場調査)
図6 所属する開発チームのAI活用状況「AI活用に必要なツールや環境が整っている」【開発チーム人数別】(市場調査)

「AI活用に必要なツールや環境が整っている」を開発チーム人数別に見ると、規模が小さいほど「とても当てはまる」の割合が下がる傾向が見られました。開発チーム100名以上の組織では25.7%だったのに対し、5名以下では5.2%にとどまり、両者では20.5ポイントの開きがあります。

これらの結果から、小規模なチームほどAI活用の環境整備は十分でないという傾向がわかりました。

AI活用先進層のチーム状況

所属する開発チームのAI活用状況(ユーザー調査)
図7 所属する開発チームのAI活用状況(ユーザー調査)

AI活用先進層では、6項目の全てで「当てはまる」または「やや当てはまる」の回答が7割から9割台に達し、市場調査の回答率を上回る結果となりました。また、項目間のばらつきも市場調査と比べて小さくなっています。

項目別に見ると、「AIを日常業務で活用するメンバーが一部の人に限らず一定数いる」への回答が95.5%で最も高い結果となりました。一方、「AI活用のノウハウやテンプレートが共有されている」は71.4%と相対的に低い結果でした。「とても当てはまる」だけの回答の割合では他の項目と比べて突出して低く、AI活用先進層においても組織内での共有に関しては一定の課題感あることが浮き彫りになりました。

AIが活用されている工程

チームとしての活用基盤は整いつつある一方で、AIが実際に使われている工程には差があります。

情報収集は5割超、実装・コードレビューは3割未満

AIが活用されている工程(市場調査・ユーザー調査比較)
図8 AIが活用されている工程(市場調査・ユーザー調査比較)

所属する開発チームでAIが活用されている工程について尋ねたところ、市場調査では「情報収集・技術調査」が53.2%で最も高い結果でした。一方、開発の中核を担う「実装」は26.6%、「コードレビュー/リファクタリング」は23.7%にとどまり、いずれも3割に届きませんでした。

これに対しAI活用先進層では、「実装」が90.3%、「コードレビュー/リファクタリング」が86.9%となりました。市場調査との差は「実装」が63.7ポイント、「コードレビュー/リファクタリング」が63.2ポイントに達し、調査対象とした全工程の中で特に差分が大きい項目となっています。

情報収集・技術調査のように検証負荷が低い工程では、市場調査でもすでにAI活用が広がっています。一方、実装やコードレビューのように、生成された内容の検証負荷が高い工程では、AI活用先進層との差が見られる結果となりました。

技術・概念の認知・重要度・取り組み状況

工程ごとの活用度に差があるように、技術や概念の重要度の認識と実際の取り組みの間にも差が見られます。

市場調査ではCI/CDの重要度・取り組み率が最多

技術・概念の認知・重要度・組織での取り組み状況(市場調査)
図9 技術・概念の認知・重要度・組織での取り組み状況(市場調査)

全15の技術・概念について重要度を尋ねたところ、「非常に重要」または「やや重要」と回答した人の割合は、「CI/CD」が61.7%で最も高い結果となりました。

組織での取り組み状況についても、「本番環境で運用している」または「一部で試験導入やPoC(概念実証)を実施している」と回答した割合は、「CI/CD」が40.1%で最も高くなりました。なお、「CI/CD」以外の技術・概念はいずれも取り組みの割合は3割台にとどまっています。

重要度と取り組み状況の両方で「CI/CD」が最上位となった一方、「プロンプトエンジニアリング」や「フィジカルAI」は言葉としての認知こそ7割を超えるものの、重要度や取り組み状況では相対的にそこまで高くはありません。

AI活用先進層はCI/CD・DevOps・AI駆動開発が定着

技術・概念の認知・重要度・組織での取り組み状況(ユーザー調査)
図10 技術・概念の認知・重要度・組織での取り組み状況(ユーザー調査)

AI活用先進層では、「CI/CD」「DevOps」「AI駆動開発」の3つについて、認知度・重要度・組織での取り組み状況のいずれも8割を超えました。市場調査では十分浸透しているとは言えなかったこれらの技術・概念が、AI活用先進層ではすでに一定の定着が図られた状態にあります。

一方、人が情報を処理する際の負担を指す「認知負荷」と、AIエージェントの出力を検証・制御する仕組みを指す「ハーネスエンジニアリング」については、認知度や重要度こそ高いものの、組織で実際に取り組む割合は相対的に低い結果でした。

AIが生成する提案やコードはAIの性質上正しさを保証するものではありません。AIエージェントが開発を担う場面が増えるほど、生成物を人が読み、正しさを判断する作業量も比例して増えていきます。認知負荷という概念がAI先進層において注目されているのは、このような背景があります。また、ハーネスエンジニアリングは、こうした検証・制御のプロセスを仕組みとして組み込んでいく取り組みとして位置づけられます。

組織課題と状況把握の実態

次に開発組織が抱える課題について見ていきます。

開発状況・AI活用状況の把握

開発状況やAI活用の状況把握に関する取り組み(市場調査)
図11 開発状況やAI活用の状況把握に関する取り組み(市場調査)

市場調査にて所属する開発組織における取り組みについて尋ねたところ、「開発状況の把握・改善に関する取り組み」を「開発組織全体で継続的に実施している」と回答した割合は22.5%でした。

一方、「AIの利用状況や効果に関する取り組み」を同様に実施している割合は17.3%で、「開発状況の把握・改善に関する取り組み」と比較して5.2ポイント低い結果でした。「ほとんど実施していない」と回答した割合も13.1%あり、AI活用状況を把握する仕組みは、開発状況の把握よりも進んでいない状況です。

所属組織の課題

所属する開発組織での課題(複数回答)(市場調査・ユーザー調査比較)
図12 所属する開発組織での課題(複数回答)(市場調査・ユーザー調査比較)

所属する開発組織の課題について、市場調査では「人材育成・スキル開発」が36.9%で最も高い結果でした。

これに対しAI活用先進層では、「人材育成・スキル開発」は4番目に後退し、「開発プロセスや進め方」と「技術的負債・レガシー対応」がともに44.6%で最多となりました。なかでも「技術的負債・レガシー対応」は市場調査を21.0ポイント上回り、両者の差が最も大きい項目となっています。

一方、「人材の採用・確保」は市場調査の29.1%に対しAI活用先進層は20.0%で9.1ポイント下回り、「人材育成・スキル開発」も36.9%に対し33.1%で3.8ポイント下回りました。これらの結果から、市場調査とAI活用先進層では、開発組織が課題として捉えているテーマや、その優先度に違いがあることがうかがえます。

今後の展望・提言

ここまでの内容を踏まえ、調査結果を基にした、開発組織が今後取り組むべき点を5つの視点で整理します。

①組織全体へのAI活用の拡大には、一般社員のAI活用の底上げがカギに

市場調査では、一般社員とリーダー層・専門職・エキスパートの間で、日常業務におけるAI活用状況に差が見られました。組織全体でAI活用を進めるうえでは、一般社員が日常業務の中でAIを活用できる環境を整え、活用の裾野を広げることが重要です。

その際に欠かせないのが、業務スピードや効率の向上だけでなく、AIが生成した内容を正しく理解し検証する力を培うことです。

また、AI活用が一定定着した組織では、個人が単にAIを使う段階から、AI活用の知見や成果をチーム内で共有・可視化し、組織としてナレッジを蓄積する仕組みづくりに踏み出す段階に変わっていきます。それが、個人の活用実感からチームへの波及実感への橋渡しになります。

②小規模組織のAI環境整備は、実績づくりと外部知見の活用が有効な打ち手に

AI活用に必要なツールや環境の整備は、開発チームの規模が小さいほど十分でない傾向が見られました。AI活用には開発投資が伴うため、実績のない状態で新たな追加コストを受け入れるのは、小規模組織にとって容易な判断ではありません。

そのような組織でAI活用を広げていくには、すでにAI活用に積極的な担当者やチームをAI推進者に任命し、PoCで実績を積み重ねながら、着実にツールや環境を整えていく進め方が現実的です。ツール選定や導入設計を専任で担う人的リソースが不足しがちな小規模組織では、社内でのPoC推進に加え、他社の知見や外部のAI導入支援サービスを取り入れることも選択肢になります。

③実装やコードレビューなどへのAI活用には、大きな伸びしろあり

市場調査でAI活用で割合が高かったのは、情報収集・技術調査でした。一方で、実装やコードレビュー/リファクタリングといった開発の中核を担う工程での活用は、まだ限定的な範囲にとどまっています。

実装やコードレビューは、情報収集・技術調査と比べてAI活用の検証負荷が高く、環境整備も必要なため、簡単には進めにくい事情があります。また、実装だけにAIを活用してもコードレビューが人手のままであれば、ボトルネックがレビュー側に移るだけで、開発全体のスピードを大きく改善することは難しいと思われます。AI活用先進層では実装90.3%、コードレビュー86.9%と両方で高い割合になっている点が、今後、多くの開発組織が目指すべき方向性を示しています。

④認知負荷・ハーネスエンジニアリングという次のトレンド

AI活用先進層では、CI/CD、DevOps、AI駆動開発について、認知・重要度・取り組みのいずれも一定の定着が進んでいます。これらの技術・概念は、今後市場全体にも浸透が広がっていく可能性が高い領域です。

一方、認知負荷とハーネスエンジニアリングは、AI活用先進層での重要度の認識の高さに対してまだ取り組みが追いついていません。AIエージェントが自律的に開発を担う場面が増えるほど、その出力を検証し制御する側である人間に新たな負荷が生じます。ハーネスエンジニアリングへの注目の高まりは、この負荷に仕組みとして取り組もうとする動きの表れと言えます。

⑤状況把握の仕組み化と「開発資本」

開発状況やAI利用状況の把握を仕組み化している組織ほど、課題認識が「人材育成・スキル開発」のような包括的なテーマから、「開発プロセス」「技術的負債」といった具体的なテーマへと解像度が上がっていく傾向が見られます。

状況把握の仕組み化は、漠然とした課題感から脱却し、組織や事業の改善につなげる有効な取り組みです。組織の状況を把握する際には、今回の調査で扱った、デプロイ頻度や変更のリードタイムなど4つの指標からなる開発生産性の指標である「Four Keys」に加えて、Findyが2026年6月に提唱した「開発資本」という考え方も活用できます。開発資本は、AI時代の開発生産性を企業の競争力を支える資産として捉える考え方です。

開発資本の詳細については、こちらのページで解説しています。

まとめ

今回の調査では、個人でのAI活用と組織としてのAI活用の間に差があり、課題もあることが見えてきました。日常業務でAIを使う人自体は市場調査でも約7割に達していますが、組織として実装やコードレビューといった開発の中核工程まで及んでいる組織はまだ限られています。

AI活用先進層でのAI活用状況を見ると、個人利用の広がりだけでなく、開発の中核工程や組織運営にまでAI活用が浸透した状態を示しています。今後、AI活用を組織全体に広げていく組織にとって一つの目指すべき方向性と言えそうです

ここまで、Findy Team+ユーザー層を「AI活用先進層」と位置づけ、現状の国内の開発組織の状況を示す市場調査の結果と比較しながら、開発組織におけるAI活用の現在地と、開発組織が次に取り組むべき点を明らかにしてきました。

今回の調査をまとめた調査レポート「開発組織のAI活用実態調査2026 -市場調査・ユーザー調査比較編-」では、開発チームの規模別や開発手法別での分析結果など、より詳細なデータを掲載しています。ぜひダウンロードください。

\ 調査レポート公開中 /

開発組織のAI活用実態調査2026
-市場調査・ユーザー調査比較編-

本記事で紹介した市場調査とAI活用先進層の比較データを、詳細な分析結果まで収録した調査レポートとして公開しています。

開発組織のAI活用実態調査2026 資料

調査概要

市場調査AI活用先進層(Findy Team+ユーザー調査)
調査方法インターネット調査インターネット調査
調査期間2026年4月24日〜25日2026年5月14日〜19日
調査対象ソフトウェア開発に関わる20〜69歳の男女のうち、ソフトウェア開発に関わる方Findy Team+導入企業のユーザー
サンプルサイズ873サンプル175サンプル
調査実施機関株式会社マクロミルファインディ株式会社

Findy Team+ サービス紹介資料

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