2026-03-27

パナソニック ホールディングスが挑む、データ主導の次世代R&D。開発データの可視化と生成AI分析で、試行錯誤を加速する研究開発

パナソニック ホールディングスが挑む、データ主導の次世代R&D。開発データの可視化と生成AI分析で、試行錯誤を加速する研究開発

目次

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パナソニックグループのR&D領域では、開発プロセスの詰まりを“勘”ではなくデータで捉え、改善を回す取り組みが始まっています。推進しているのは、技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室。スクラムを実践するチームをパイロットにFindy Team+を導入し、Four Keysとレビュー指標を組み合わせた分析により、開発生産性のボトルネックを可視化しています。

本記事では、R&D組織においてDevOps指標をどのように読み替え、現場が動く形で改善活動につなげたのか。その運用の工夫や、生成AIを活用したレポーティング自動化まで含めた取り組みを伺いました。

プロフィール

加増 美帆さん
パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室 シニアリードエンジニア

1997年に松下電器産業へ入社後、半導体・モバイル領域の組込みソフトウェア開発に従事し、デバイスドライバー/ミドルウェア/アプリ開発を幅広く経験する。車載向けDisplay Audio、スマートリアビューミラー、歩行者検知機能付きリアカメラシステムなどの開発を経て、車載制御領域にも携わる。2023年より全社横断でソフトウェア開発力の強化・改善推進を担当している。

柏木 雄毅さん
パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室 エンジニア

パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室に所属。パナソニックグループ全体のソフトウェア開発力強化に向けて、先進的な開発手法の実践と仕組み化を推進している。Findy Team+の取り組みでは、パイロット適用の設計や展開方針の検討を担い、現場の改善成果をデータで説明できる状態づくりにも取り組む。

森下 直人さん
パナソニック アドバンストテクノロジー 経営管理センター 業務推進課 シニアエンジニア

1988年に前身である松下ソフトリサーチに入社後、ソフトウェア開発に従事し、2000年以降は開発プロセス改善および品質向上支援へ軸足を移す。可視化、解析、CIなどを通じて開発組織の生産性向上を支援。現在はパナソニックグループにおけるソフトウェア開発プロセス講座の講師を務めるとともに、全社システム開発力強化推進室にて生成AIを活用した開発プロセス改善に取り組んでいる。

R&D部門で「見える化」が必要だった理由──価値創出のサイクルを速く回す

—— パナソニックグループにおけるR&D部門の役割と、「見える化」に取り組んだ背景を教えてください。

加増: R&D部門は、新しい商品や事業を生み、育て、立ち上げる役割を担っています。そこで重要になるのが「価値創出のスピード」です。素早く作り、学び、改善する。こうした開発サイクルをいかに速く回せるかが重要になります。

しかし、R&Dの現場、特に初期フェーズでは少人数で閉じて開発が進むことも多く、進捗や実態が見えにくく属人的になりやすい課題がありました。そこで、課題の議論や改善を再現性を持って行えるようにするために、開発サイクルが「ちゃんと回っているか」を把握・可視化できる状態を目指しました。

——「全社システム開発力強化推進室」は、そこでどのような動きをしたのでしょうか。

柏木: 私たちは全社横断の立場でソフトウェア開発力を仕組みとして定着・向上させる役割を持っています。具体的にはスクラムの導入支援や、クラウド領域を中心とした開発環境(IaC/CI/CDなど)の整備に取り組んでいます。現場のチームに入りまずパイロットとして試し、うまくいったものを横展開していく動き方ですね。

—— 当初は自作のツールで可視化を試みていたそうですが、そこからFindy Team+の導入を決めた理由は何でしたか。

加増: 事業会社ではメトリクスを見ながら改善を回すのが当たり前でしたが、指標の集計は手作業に頼っており運用負荷の大きさが課題でした。そのため、月1回の集計や分析にも多くの工数がかかっていました。Findy Team+であればGitHubなどと連携して自動でデータが取得でき、分析画面も揃っているため「現場の負担を増やさずに改善を回せる」と具体的にイメージできたことが最大の理由です。

森下: 2022年度からPMO(ProjectManagementOfficer)としてサポートしている現場において、部長より「Four Keys(DORA指標)で状況を見てみたい」とのリクエストがありました。そこで独自にレーダーチャートを整備し、可視化を行っていました。しかし、毎週リリースするわけではないR&D部門では Four Keys をそのまま適用することに難しさを感じました。 さらに、独自の仕組みは運用を続けるにつれて「初見だと読み取りにくい」という課題があり、説明コストが増えていきました。こうした背景から、共通言語として理解されやすい Findy Team+ に切り替える判断に至りました。

—— 推進室として、最初から全社展開するのではなく、特定のチームを「パイロット」に選んだ意図を教えてください。

加増: いきなり全体へ広げるよりも、まずスクラム開発などの実践が進んでいるチームに導入し、「可視化→改善→成果」までの一連の流れを作るほうが社内に成果を説明しやすいと考えたからです。 他部署に協力をお願いする以上、「導入した理由」と「導入した結果」を、誰もが納得できる形で示す必要があります。まずは小さく導入し、失敗も織り込みながら改善が回る形を作る。そこで成果が出れば、横展開しやすくなるという考えで進めました。

森下: パイロットチームでは、もともと「レビューが習慣として定着していない」との認識があったため、Findy Team+導入後はレビュー周りの改善から取り組まれました。チームの課題に合う見方を定義しながら進めた結果、導入して3ヵ月後にはレビュー依頼率100%となり、早期に効果が現れました。

データ可視化がもたらした現場とマネジメントの変化

—— パイロットを進めるうえで、現場から可視化に対する抵抗感や反対の声はありましたか?

森下: パイロットチームはリーダーの意識が高く、「どんどんやってほしい」という前向きなスタンスだったため、可視化そのものに対する抵抗感はありませんでした。 ただし、現場としては「何をどう可視化すれば改善に繋がるのか」が分からないまま、数字だけ提示されると迷いが生じて手が止まってしまいます。そのため、導入前から一定の“見える化”を試しながら、現場が納得できる形で進めていきました。

—— 推進していく中で、現場やマネジメント層にはどのような変化や意外な反応がありましたか?

柏木: 開発者視点で見ると、どれだけ仕事をしているのか、事業への貢献の濃淡がデータとして明確に出る点が良かったです。上司に「どれだけ仕事をしているの?」と聞かれた際にも、感覚ではなく「これくらいやっています」と数字で示せます。驚きというより、こうして可視化されることで「努力がきちんと可視化されて安心できる、モチベーションが上がりそう」という感覚がありました。

加増: 印象的だったのは、レビューが「特定の人に偏っている」といった状況を端的に可視化できるようになったことです。感覚的に把握していた課題も定量データとして示されることで、現場の認識が揃いやすくなりました。
さらに、現場主導で生成AIによるレビュー支援などを導入した結果、レビューの待ち時間が「体感的に減った」ではなく、実際に「1/8に減少した」と数字で確認できました。成果をデータで確認でき、開発生産性がどのように向上したのかを同じ画面で追えることは、推進する側にとって大きな価値があります。

—— チームの状況を可視化してレポートする運用は、マネジメント層(部長層)に対してどのような目的で行っていたのでしょうか。

森下: 一番の目的は「現場の問題をいかに早く吸い上げて、解決するか」です。以前、部長から「問題があがってこない」と指摘されたことがありました。当時は現場の課題が的確に捉えられていなかったり、焦点が外れたサポートになっていたことを反省しました。その経験から、客観的かつタイムリーにデータを分析・可視化し、論理的に積み上げながら『これは課題ではないか』を示すことが重要だと考えています。

—— つまり、「傾向が出ているのでまずいかもしれない」と数字の根拠で示すことが求められていたのですね。

森下: その通りです。組織が50〜60人規模になり開発テーマも増えると、部長がすべてを直接把握するのは困難です。だからこそ、PMOが第三者として部長の“目と耳”になり、客観的なデータを吸い上げる必要がありました。

また、定量データだけでは拾いきれない部分もあるため、気になるメンバーには1on1のフォローも行い、定性的な情報も共有していました。定量データと定性的な状況の両方を積み上げて説明できると、「このままだと危ない」「ここが詰まっている」といったアラートを早い段階で上げることができ、打ち手の選択肢が増えていきます。

可視化によって、単に数字が見えるだけでなく、「ここは変えよう」という意思決定が前に進むようになり、人も組織も育てやすくなったと感じています。実際、最初は「テストって何?」という状態だった組織も、3年間取り組みを続ける中で、現在ではグローバルに活躍され、「世界で戦える」と言えるレベルまで成長しました。

加増: Findy Team+のカスタマーサクセスがコンサルティングに入っていただき、UIの見方や分析の「勘所」を教わることができたのは非常に大きかったです。数値から見える課題や指標同士の相関、分析時の解釈といったノウハウを得られたからこそ、後述する生成AIを活用したレポーティングでも「この出力は妥当だ」と判断できるようになりました。 単にツールを導入するだけでなく、分析の「型」そのものを取り入れられたことにも大きな価値を感じています。今後はそのノウハウをAIによる自動生成レポートに組み込んでいきたいと考えています。

—— そのノウハウをベースに、生成AIを使ったレポーティングを始めたそうですね。きっかけは何でしたか?

森下: 最初は、Findy Team+の画面の見方を現場に伝えるために、「このグラフはこう読む」といった手順書を作ろうとしていました。しかし、画面も論点も多く、きちんと伝えようとすればするほど手順書が分厚くなってしまい、作る側の工数も膨大になり成果に繋がりにくい、読む側にとっても負担が大きい ーーそんな限界を感じたのが転機でした。

そこで試しに、グラフの画面キャプチャを生成AIに入力し、「どんな課題が読み取れますか?」と聞いたら、かなり的確に読み取ってくれたのです。それを見て、「手順書を作り込むよりも、生成AIに要点を整理させた方が合理的ではないか」と気づき、一気に仕組み化へ動き出しました。

—— 生成AIを“もう一人の分析の専門家”として導入したことで、どのような変化がありましたか。

森下: 分析のスピード感と情報量が劇的に変わりました。感覚としては、Findy Team+で見えているデータを読み解く力がブーストされたイメージです。 以前は人手で分析していたため時間がかかり、どうしても見るポイントを絞らざる得ませんでした。しかし、現在では「整備効率は4倍、情報量は5倍」になり、レポート作成自体は30分ほどで完了します。

—— 実際にAIレポートを現場に出してみて、反応はいかがでしたか?

森下: 生成AIが出力したレポートは少し“冷たい”という印象がありました。そこで、人が書いていた時代のレポートと生成AIのレポートをAI自身に比較・分析させてみたところ、「人が書いたレポートの方が温かみが感じられる」という結果が出たんです。 人が書くと、励ましや感情のニュアンスが自然と入ります。そこで今後は、生成AIでもそうしたニュアンスが出るようプロンプトを工夫し、より納得感のある“温度”を持たせようと考えています。

—— 効率化して空いた時間は、どのように活用されているのでしょうか。

森下: レポート作成にかかる時間が短縮されたことで、その分、現場とのコミュニケーションや課題の深掘りに時間を使えるようになりました。 

柏木: 単にレポートを出すだけでは、受け手側も「言われている感」になりがちです。しかし、PMOがコミュニケーションを取って「一緒に考えようか」と対話に入ることで、改善の質が変わります。効率化の本当の利点は、創出した時間を現場とのコミュニケーションに使い、さらに改善のループを回すための時間を捻出できるようになったことだと思います。

導入から1年。成果をエビデンスで語れる組織へ

—— 生成AIレポーティングも含め、Findy Team+を導入して約1年が経ちました。開発現場に変化はありましたか?

森下: Findy Team+で分析するテーマがどんどん増えてきました。組織全体として「見て、分析して、活用して、改善する」という流れが生まれ、その機運が高まっていると感じています。 R&Dの現場では改善活動に積極的に関わっていただけるか不安でしたが、実際には「やめよう」「いらない」という声は聞いていません。

—— マネジメントや上層部への報告という観点ではいかがでしょうか。

加増: 推進する立場として、レポートを通じて「これだけ改善している」とデータで示せるようになったことは大きな前進でした。データがあることで「自分たちの活動が着実に成果につながっている」という共通認識を関係者の間で持ちやすくなりました。いつでもエビデンスを示しながら議論や説明ができることが、推進において大きな意味を持ちました。

森下: パイロットチームが属する組織では「爆速開発」を目標として掲げています。スピード感を持って開発するという方針と、Findy Team+で測定・改善していくサイクルがうまく噛み合い、シンクロしていたからこそ現場にも定着したのだと思います。

今後の展望とエンジニアへのメッセージ

—— 1年間の成果を踏まえ、2026年度の目標を教えてください。

加増: 特定の部署でのパイロット適用を通じて成果が見えてきたことから次の段階として、この「実践の仕組み」をDX・CPS本部の他部門、さらには全社へと広げていきたいと考えています。 また森下さんが構築した生成AI活用のレポート手法なども社内のLT会(短時間の発表会)などで発信し、有効な実践は広く共有していく方針です。そうした取り組みを通じて仲間を増やし、生産性向上活動の輪を広げていくことが次のチャレンジです。

—— 最後に、組織のアピールポイントや、読者へのメッセージをお願いします。

柏木: パナソニックグループは他のIT企業と比べると、ソフトウェア開発の組織能力という面ではまだ伸びしろがあると感じています。今、Findy Team+の取り組みや生成AIの活用も含めて「ソフトウェア開発者にとっても働きやすい会社」になろうとグループ全体で取り組んでいます。今日お話ししたような開発の考え方に共感頂ける方に、働く場の一つとしてパナソニックグループにも関心を持って頂けたらうれしいです。

加増: 私たちのミッションは、先進のシステム開発力を手の内化しグループ全体のビジネスモデル変革を加速させることです。事業会社在籍時には情報を手作業で集約していましたが、ツールと連携するだけでデータを可視化でき、他社との比較を通じて自分たちの立ち位置も把握しやすくなりました。そうした環境が整ったことで「次はもう少し高い水準を目指そう」といった前向きな対話も生まれやすくなりました。

森下: 今は生成AIによって事業が大きくシフトしているタイミングだと感じています。生成AIを活用することでパナソニックグループのビジネスモデルを変え、躍進できるチャンスが来ていると思います。ツールベンダーの皆さんとも連携しながら取り組みを進めていけば、再び業界をリードする第一線に立てると信じています。 

※AI戦略支援SaaS「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます

経営と開発現場をつなぐAI戦略支援SaaS Findy Team+

パナソニックグループのR&D領域では、開発プロセスの詰まりを“勘”ではなくデータで捉え、改善を回す取り組みが始まっています。推進しているのは、技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室。スクラムを実践するチームをパイロットにFindy Team+を導入し、Four Keysとレビュー指標を組み合わせた分析により、開発生産性のボトルネックを可視化しています。

本記事では、R&D組織においてDevOps指標をどのように読み替え、現場が動く形で改善活動につなげたのか。その運用の工夫や、生成AIを活用したレポーティング自動化まで含めた取り組みを伺いました。

プロフィール

加増 美帆さん
パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室 シニアリードエンジニア

1997年に松下電器産業へ入社後、半導体・モバイル領域の組込みソフトウェア開発に従事し、デバイスドライバー/ミドルウェア/アプリ開発を幅広く経験する。車載向けDisplay Audio、スマートリアビューミラー、歩行者検知機能付きリアカメラシステムなどの開発を経て、車載制御領域にも携わる。2023年より全社横断でソフトウェア開発力の強化・改善推進を担当している。

柏木 雄毅さん
パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室 エンジニア

パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室に所属。パナソニックグループ全体のソフトウェア開発力強化に向けて、先進的な開発手法の実践と仕組み化を推進している。Findy Team+の取り組みでは、パイロット適用の設計や展開方針の検討を担い、現場の改善成果をデータで説明できる状態づくりにも取り組む。

森下 直人さん
パナソニック アドバンストテクノロジー 経営管理センター 業務推進課 シニアエンジニア

1988年に前身である松下ソフトリサーチに入社後、ソフトウェア開発に従事し、2000年以降は開発プロセス改善および品質向上支援へ軸足を移す。可視化、解析、CIなどを通じて開発組織の生産性向上を支援。現在はパナソニックグループにおけるソフトウェア開発プロセス講座の講師を務めるとともに、全社システム開発力強化推進室にて生成AIを活用した開発プロセス改善に取り組んでいる。

R&D部門で「見える化」が必要だった理由──価値創出のサイクルを速く回す

—— パナソニックグループにおけるR&D部門の役割と、「見える化」に取り組んだ背景を教えてください。

加増: R&D部門は、新しい商品や事業を生み、育て、立ち上げる役割を担っています。そこで重要になるのが「価値創出のスピード」です。素早く作り、学び、改善する。こうした開発サイクルをいかに速く回せるかが重要になります。

しかし、R&Dの現場、特に初期フェーズでは少人数で閉じて開発が進むことも多く、進捗や実態が見えにくく属人的になりやすい課題がありました。そこで、課題の議論や改善を再現性を持って行えるようにするために、開発サイクルが「ちゃんと回っているか」を把握・可視化できる状態を目指しました。

——「全社システム開発力強化推進室」は、そこでどのような動きをしたのでしょうか。

柏木: 私たちは全社横断の立場でソフトウェア開発力を仕組みとして定着・向上させる役割を持っています。具体的にはスクラムの導入支援や、クラウド領域を中心とした開発環境(IaC/CI/CDなど)の整備に取り組んでいます。現場のチームに入りまずパイロットとして試し、うまくいったものを横展開していく動き方ですね。

—— 当初は自作のツールで可視化を試みていたそうですが、そこからFindy Team+の導入を決めた理由は何でしたか。

加増: 事業会社ではメトリクスを見ながら改善を回すのが当たり前でしたが、指標の集計は手作業に頼っており運用負荷の大きさが課題でした。そのため、月1回の集計や分析にも多くの工数がかかっていました。Findy Team+であればGitHubなどと連携して自動でデータが取得でき、分析画面も揃っているため「現場の負担を増やさずに改善を回せる」と具体的にイメージできたことが最大の理由です。

森下: 2022年度からPMO(ProjectManagementOfficer)としてサポートしている現場において、部長より「Four Keys(DORA指標)で状況を見てみたい」とのリクエストがありました。そこで独自にレーダーチャートを整備し、可視化を行っていました。しかし、毎週リリースするわけではないR&D部門では Four Keys をそのまま適用することに難しさを感じました。 さらに、独自の仕組みは運用を続けるにつれて「初見だと読み取りにくい」という課題があり、説明コストが増えていきました。こうした背景から、共通言語として理解されやすい Findy Team+ に切り替える判断に至りました。

—— 推進室として、最初から全社展開するのではなく、特定のチームを「パイロット」に選んだ意図を教えてください。

加増: いきなり全体へ広げるよりも、まずスクラム開発などの実践が進んでいるチームに導入し、「可視化→改善→成果」までの一連の流れを作るほうが社内に成果を説明しやすいと考えたからです。 他部署に協力をお願いする以上、「導入した理由」と「導入した結果」を、誰もが納得できる形で示す必要があります。まずは小さく導入し、失敗も織り込みながら改善が回る形を作る。そこで成果が出れば、横展開しやすくなるという考えで進めました。

森下: パイロットチームでは、もともと「レビューが習慣として定着していない」との認識があったため、Findy Team+導入後はレビュー周りの改善から取り組まれました。チームの課題に合う見方を定義しながら進めた結果、導入して3ヵ月後にはレビュー依頼率100%となり、早期に効果が現れました。

データ可視化がもたらした現場とマネジメントの変化

—— パイロットを進めるうえで、現場から可視化に対する抵抗感や反対の声はありましたか?

森下: パイロットチームはリーダーの意識が高く、「どんどんやってほしい」という前向きなスタンスだったため、可視化そのものに対する抵抗感はありませんでした。 ただし、現場としては「何をどう可視化すれば改善に繋がるのか」が分からないまま、数字だけ提示されると迷いが生じて手が止まってしまいます。そのため、導入前から一定の“見える化”を試しながら、現場が納得できる形で進めていきました。

—— 推進していく中で、現場やマネジメント層にはどのような変化や意外な反応がありましたか?

柏木: 開発者視点で見ると、どれだけ仕事をしているのか、事業への貢献の濃淡がデータとして明確に出る点が良かったです。上司に「どれだけ仕事をしているの?」と聞かれた際にも、感覚ではなく「これくらいやっています」と数字で示せます。驚きというより、こうして可視化されることで「努力がきちんと可視化されて安心できる、モチベーションが上がりそう」という感覚がありました。

加増: 印象的だったのは、レビューが「特定の人に偏っている」といった状況を端的に可視化できるようになったことです。感覚的に把握していた課題も定量データとして示されることで、現場の認識が揃いやすくなりました。
さらに、現場主導で生成AIによるレビュー支援などを導入した結果、レビューの待ち時間が「体感的に減った」ではなく、実際に「1/8に減少した」と数字で確認できました。成果をデータで確認でき、開発生産性がどのように向上したのかを同じ画面で追えることは、推進する側にとって大きな価値があります。

—— チームの状況を可視化してレポートする運用は、マネジメント層(部長層)に対してどのような目的で行っていたのでしょうか。

森下: 一番の目的は「現場の問題をいかに早く吸い上げて、解決するか」です。以前、部長から「問題があがってこない」と指摘されたことがありました。当時は現場の課題が的確に捉えられていなかったり、焦点が外れたサポートになっていたことを反省しました。その経験から、客観的かつタイムリーにデータを分析・可視化し、論理的に積み上げながら『これは課題ではないか』を示すことが重要だと考えています。

—— つまり、「傾向が出ているのでまずいかもしれない」と数字の根拠で示すことが求められていたのですね。

森下: その通りです。組織が50〜60人規模になり開発テーマも増えると、部長がすべてを直接把握するのは困難です。だからこそ、PMOが第三者として部長の“目と耳”になり、客観的なデータを吸い上げる必要がありました。

また、定量データだけでは拾いきれない部分もあるため、気になるメンバーには1on1のフォローも行い、定性的な情報も共有していました。定量データと定性的な状況の両方を積み上げて説明できると、「このままだと危ない」「ここが詰まっている」といったアラートを早い段階で上げることができ、打ち手の選択肢が増えていきます。

可視化によって、単に数字が見えるだけでなく、「ここは変えよう」という意思決定が前に進むようになり、人も組織も育てやすくなったと感じています。実際、最初は「テストって何?」という状態だった組織も、3年間取り組みを続ける中で、現在ではグローバルに活躍され、「世界で戦える」と言えるレベルまで成長しました。

加増: Findy Team+のカスタマーサクセスがコンサルティングに入っていただき、UIの見方や分析の「勘所」を教わることができたのは非常に大きかったです。数値から見える課題や指標同士の相関、分析時の解釈といったノウハウを得られたからこそ、後述する生成AIを活用したレポーティングでも「この出力は妥当だ」と判断できるようになりました。 単にツールを導入するだけでなく、分析の「型」そのものを取り入れられたことにも大きな価値を感じています。今後はそのノウハウをAIによる自動生成レポートに組み込んでいきたいと考えています。

—— そのノウハウをベースに、生成AIを使ったレポーティングを始めたそうですね。きっかけは何でしたか?

森下: 最初は、Findy Team+の画面の見方を現場に伝えるために、「このグラフはこう読む」といった手順書を作ろうとしていました。しかし、画面も論点も多く、きちんと伝えようとすればするほど手順書が分厚くなってしまい、作る側の工数も膨大になり成果に繋がりにくい、読む側にとっても負担が大きい ーーそんな限界を感じたのが転機でした。

そこで試しに、グラフの画面キャプチャを生成AIに入力し、「どんな課題が読み取れますか?」と聞いたら、かなり的確に読み取ってくれたのです。それを見て、「手順書を作り込むよりも、生成AIに要点を整理させた方が合理的ではないか」と気づき、一気に仕組み化へ動き出しました。

—— 生成AIを“もう一人の分析の専門家”として導入したことで、どのような変化がありましたか。

森下: 分析のスピード感と情報量が劇的に変わりました。感覚としては、Findy Team+で見えているデータを読み解く力がブーストされたイメージです。 以前は人手で分析していたため時間がかかり、どうしても見るポイントを絞らざる得ませんでした。しかし、現在では「整備効率は4倍、情報量は5倍」になり、レポート作成自体は30分ほどで完了します。

—— 実際にAIレポートを現場に出してみて、反応はいかがでしたか?

森下: 生成AIが出力したレポートは少し“冷たい”という印象がありました。そこで、人が書いていた時代のレポートと生成AIのレポートをAI自身に比較・分析させてみたところ、「人が書いたレポートの方が温かみが感じられる」という結果が出たんです。 人が書くと、励ましや感情のニュアンスが自然と入ります。そこで今後は、生成AIでもそうしたニュアンスが出るようプロンプトを工夫し、より納得感のある“温度”を持たせようと考えています。

—— 効率化して空いた時間は、どのように活用されているのでしょうか。

森下: レポート作成にかかる時間が短縮されたことで、その分、現場とのコミュニケーションや課題の深掘りに時間を使えるようになりました。 

柏木: 単にレポートを出すだけでは、受け手側も「言われている感」になりがちです。しかし、PMOがコミュニケーションを取って「一緒に考えようか」と対話に入ることで、改善の質が変わります。効率化の本当の利点は、創出した時間を現場とのコミュニケーションに使い、さらに改善のループを回すための時間を捻出できるようになったことだと思います。

導入から1年。成果をエビデンスで語れる組織へ

—— 生成AIレポーティングも含め、Findy Team+を導入して約1年が経ちました。開発現場に変化はありましたか?

森下: Findy Team+で分析するテーマがどんどん増えてきました。組織全体として「見て、分析して、活用して、改善する」という流れが生まれ、その機運が高まっていると感じています。 R&Dの現場では改善活動に積極的に関わっていただけるか不安でしたが、実際には「やめよう」「いらない」という声は聞いていません。

—— マネジメントや上層部への報告という観点ではいかがでしょうか。

加増: 推進する立場として、レポートを通じて「これだけ改善している」とデータで示せるようになったことは大きな前進でした。データがあることで「自分たちの活動が着実に成果につながっている」という共通認識を関係者の間で持ちやすくなりました。いつでもエビデンスを示しながら議論や説明ができることが、推進において大きな意味を持ちました。

森下: パイロットチームが属する組織では「爆速開発」を目標として掲げています。スピード感を持って開発するという方針と、Findy Team+で測定・改善していくサイクルがうまく噛み合い、シンクロしていたからこそ現場にも定着したのだと思います。

今後の展望とエンジニアへのメッセージ

—— 1年間の成果を踏まえ、2026年度の目標を教えてください。

加増: 特定の部署でのパイロット適用を通じて成果が見えてきたことから次の段階として、この「実践の仕組み」をDX・CPS本部の他部門、さらには全社へと広げていきたいと考えています。 また森下さんが構築した生成AI活用のレポート手法なども社内のLT会(短時間の発表会)などで発信し、有効な実践は広く共有していく方針です。そうした取り組みを通じて仲間を増やし、生産性向上活動の輪を広げていくことが次のチャレンジです。

—— 最後に、組織のアピールポイントや、読者へのメッセージをお願いします。

柏木: パナソニックグループは他のIT企業と比べると、ソフトウェア開発の組織能力という面ではまだ伸びしろがあると感じています。今、Findy Team+の取り組みや生成AIの活用も含めて「ソフトウェア開発者にとっても働きやすい会社」になろうとグループ全体で取り組んでいます。今日お話ししたような開発の考え方に共感頂ける方に、働く場の一つとしてパナソニックグループにも関心を持って頂けたらうれしいです。

加増: 私たちのミッションは、先進のシステム開発力を手の内化しグループ全体のビジネスモデル変革を加速させることです。事業会社在籍時には情報を手作業で集約していましたが、ツールと連携するだけでデータを可視化でき、他社との比較を通じて自分たちの立ち位置も把握しやすくなりました。そうした環境が整ったことで「次はもう少し高い水準を目指そう」といった前向きな対話も生まれやすくなりました。

森下: 今は生成AIによって事業が大きくシフトしているタイミングだと感じています。生成AIを活用することでパナソニックグループのビジネスモデルを変え、躍進できるチャンスが来ていると思います。ツールベンダーの皆さんとも連携しながら取り組みを進めていけば、再び業界をリードする第一線に立てると信じています。 

※AI戦略支援SaaS「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます

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パナソニック ホールディングスが挑む、データ主導の次世代R&D。開発データの可視化と生成AI分析で、試行錯誤を加速する研究開発

パナソニックグループのR&D領域では、開発プロセスの詰まりを“勘”ではなくデータで捉え、改善を回す取り組みが始まっています。推進しているのは、技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室。スクラムを実践するチームをパイロットにFindy Team+を導入し、Four Keysとレビュー指標を組み合わせた分析により、開発生産性のボトルネックを可視化しています。

本記事では、R&D組織においてDevOps指標をどのように読み替え、現場が動く形で改善活動につなげたのか。その運用の工夫や、生成AIを活用したレポーティング自動化まで含めた取り組みを伺いました。

プロフィール

加増 美帆さん
パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室 シニアリードエンジニア

1997年に松下電器産業へ入社後、半導体・モバイル領域の組込みソフトウェア開発に従事し、デバイスドライバー/ミドルウェア/アプリ開発を幅広く経験する。車載向けDisplay Audio、スマートリアビューミラー、歩行者検知機能付きリアカメラシステムなどの開発を経て、車載制御領域にも携わる。2023年より全社横断でソフトウェア開発力の強化・改善推進を担当している。

柏木 雄毅さん
パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室 エンジニア

パナソニック ホールディングス 技術部門 DX・CPS本部 全社システム開発力強化推進室に所属。パナソニックグループ全体のソフトウェア開発力強化に向けて、先進的な開発手法の実践と仕組み化を推進している。Findy Team+の取り組みでは、パイロット適用の設計や展開方針の検討を担い、現場の改善成果をデータで説明できる状態づくりにも取り組む。

森下 直人さん
パナソニック アドバンストテクノロジー 経営管理センター 業務推進課 シニアエンジニア

1988年に前身である松下ソフトリサーチに入社後、ソフトウェア開発に従事し、2000年以降は開発プロセス改善および品質向上支援へ軸足を移す。可視化、解析、CIなどを通じて開発組織の生産性向上を支援。現在はパナソニックグループにおけるソフトウェア開発プロセス講座の講師を務めるとともに、全社システム開発力強化推進室にて生成AIを活用した開発プロセス改善に取り組んでいる。

R&D部門で「見える化」が必要だった理由──価値創出のサイクルを速く回す

—— パナソニックグループにおけるR&D部門の役割と、「見える化」に取り組んだ背景を教えてください。

加増: R&D部門は、新しい商品や事業を生み、育て、立ち上げる役割を担っています。そこで重要になるのが「価値創出のスピード」です。素早く作り、学び、改善する。こうした開発サイクルをいかに速く回せるかが重要になります。

しかし、R&Dの現場、特に初期フェーズでは少人数で閉じて開発が進むことも多く、進捗や実態が見えにくく属人的になりやすい課題がありました。そこで、課題の議論や改善を再現性を持って行えるようにするために、開発サイクルが「ちゃんと回っているか」を把握・可視化できる状態を目指しました。

——「全社システム開発力強化推進室」は、そこでどのような動きをしたのでしょうか。

柏木: 私たちは全社横断の立場でソフトウェア開発力を仕組みとして定着・向上させる役割を持っています。具体的にはスクラムの導入支援や、クラウド領域を中心とした開発環境(IaC/CI/CDなど)の整備に取り組んでいます。現場のチームに入りまずパイロットとして試し、うまくいったものを横展開していく動き方ですね。

—— 当初は自作のツールで可視化を試みていたそうですが、そこからFindy Team+の導入を決めた理由は何でしたか。

加増: 事業会社ではメトリクスを見ながら改善を回すのが当たり前でしたが、指標の集計は手作業に頼っており運用負荷の大きさが課題でした。そのため、月1回の集計や分析にも多くの工数がかかっていました。Findy Team+であればGitHubなどと連携して自動でデータが取得でき、分析画面も揃っているため「現場の負担を増やさずに改善を回せる」と具体的にイメージできたことが最大の理由です。

森下: 2022年度からPMO(ProjectManagementOfficer)としてサポートしている現場において、部長より「Four Keys(DORA指標)で状況を見てみたい」とのリクエストがありました。そこで独自にレーダーチャートを整備し、可視化を行っていました。しかし、毎週リリースするわけではないR&D部門では Four Keys をそのまま適用することに難しさを感じました。 さらに、独自の仕組みは運用を続けるにつれて「初見だと読み取りにくい」という課題があり、説明コストが増えていきました。こうした背景から、共通言語として理解されやすい Findy Team+ に切り替える判断に至りました。

—— 推進室として、最初から全社展開するのではなく、特定のチームを「パイロット」に選んだ意図を教えてください。

加増: いきなり全体へ広げるよりも、まずスクラム開発などの実践が進んでいるチームに導入し、「可視化→改善→成果」までの一連の流れを作るほうが社内に成果を説明しやすいと考えたからです。 他部署に協力をお願いする以上、「導入した理由」と「導入した結果」を、誰もが納得できる形で示す必要があります。まずは小さく導入し、失敗も織り込みながら改善が回る形を作る。そこで成果が出れば、横展開しやすくなるという考えで進めました。

森下: パイロットチームでは、もともと「レビューが習慣として定着していない」との認識があったため、Findy Team+導入後はレビュー周りの改善から取り組まれました。チームの課題に合う見方を定義しながら進めた結果、導入して3ヵ月後にはレビュー依頼率100%となり、早期に効果が現れました。

データ可視化がもたらした現場とマネジメントの変化

—— パイロットを進めるうえで、現場から可視化に対する抵抗感や反対の声はありましたか?

森下: パイロットチームはリーダーの意識が高く、「どんどんやってほしい」という前向きなスタンスだったため、可視化そのものに対する抵抗感はありませんでした。 ただし、現場としては「何をどう可視化すれば改善に繋がるのか」が分からないまま、数字だけ提示されると迷いが生じて手が止まってしまいます。そのため、導入前から一定の“見える化”を試しながら、現場が納得できる形で進めていきました。

—— 推進していく中で、現場やマネジメント層にはどのような変化や意外な反応がありましたか?

柏木: 開発者視点で見ると、どれだけ仕事をしているのか、事業への貢献の濃淡がデータとして明確に出る点が良かったです。上司に「どれだけ仕事をしているの?」と聞かれた際にも、感覚ではなく「これくらいやっています」と数字で示せます。驚きというより、こうして可視化されることで「努力がきちんと可視化されて安心できる、モチベーションが上がりそう」という感覚がありました。

加増: 印象的だったのは、レビューが「特定の人に偏っている」といった状況を端的に可視化できるようになったことです。感覚的に把握していた課題も定量データとして示されることで、現場の認識が揃いやすくなりました。
さらに、現場主導で生成AIによるレビュー支援などを導入した結果、レビューの待ち時間が「体感的に減った」ではなく、実際に「1/8に減少した」と数字で確認できました。成果をデータで確認でき、開発生産性がどのように向上したのかを同じ画面で追えることは、推進する側にとって大きな価値があります。

—— チームの状況を可視化してレポートする運用は、マネジメント層(部長層)に対してどのような目的で行っていたのでしょうか。

森下: 一番の目的は「現場の問題をいかに早く吸い上げて、解決するか」です。以前、部長から「問題があがってこない」と指摘されたことがありました。当時は現場の課題が的確に捉えられていなかったり、焦点が外れたサポートになっていたことを反省しました。その経験から、客観的かつタイムリーにデータを分析・可視化し、論理的に積み上げながら『これは課題ではないか』を示すことが重要だと考えています。

—— つまり、「傾向が出ているのでまずいかもしれない」と数字の根拠で示すことが求められていたのですね。

森下: その通りです。組織が50〜60人規模になり開発テーマも増えると、部長がすべてを直接把握するのは困難です。だからこそ、PMOが第三者として部長の“目と耳”になり、客観的なデータを吸い上げる必要がありました。

また、定量データだけでは拾いきれない部分もあるため、気になるメンバーには1on1のフォローも行い、定性的な情報も共有していました。定量データと定性的な状況の両方を積み上げて説明できると、「このままだと危ない」「ここが詰まっている」といったアラートを早い段階で上げることができ、打ち手の選択肢が増えていきます。

可視化によって、単に数字が見えるだけでなく、「ここは変えよう」という意思決定が前に進むようになり、人も組織も育てやすくなったと感じています。実際、最初は「テストって何?」という状態だった組織も、3年間取り組みを続ける中で、現在ではグローバルに活躍され、「世界で戦える」と言えるレベルまで成長しました。

加増: Findy Team+のカスタマーサクセスがコンサルティングに入っていただき、UIの見方や分析の「勘所」を教わることができたのは非常に大きかったです。数値から見える課題や指標同士の相関、分析時の解釈といったノウハウを得られたからこそ、後述する生成AIを活用したレポーティングでも「この出力は妥当だ」と判断できるようになりました。 単にツールを導入するだけでなく、分析の「型」そのものを取り入れられたことにも大きな価値を感じています。今後はそのノウハウをAIによる自動生成レポートに組み込んでいきたいと考えています。

—— そのノウハウをベースに、生成AIを使ったレポーティングを始めたそうですね。きっかけは何でしたか?

森下: 最初は、Findy Team+の画面の見方を現場に伝えるために、「このグラフはこう読む」といった手順書を作ろうとしていました。しかし、画面も論点も多く、きちんと伝えようとすればするほど手順書が分厚くなってしまい、作る側の工数も膨大になり成果に繋がりにくい、読む側にとっても負担が大きい ーーそんな限界を感じたのが転機でした。

そこで試しに、グラフの画面キャプチャを生成AIに入力し、「どんな課題が読み取れますか?」と聞いたら、かなり的確に読み取ってくれたのです。それを見て、「手順書を作り込むよりも、生成AIに要点を整理させた方が合理的ではないか」と気づき、一気に仕組み化へ動き出しました。

—— 生成AIを“もう一人の分析の専門家”として導入したことで、どのような変化がありましたか。

森下: 分析のスピード感と情報量が劇的に変わりました。感覚としては、Findy Team+で見えているデータを読み解く力がブーストされたイメージです。 以前は人手で分析していたため時間がかかり、どうしても見るポイントを絞らざる得ませんでした。しかし、現在では「整備効率は4倍、情報量は5倍」になり、レポート作成自体は30分ほどで完了します。

—— 実際にAIレポートを現場に出してみて、反応はいかがでしたか?

森下: 生成AIが出力したレポートは少し“冷たい”という印象がありました。そこで、人が書いていた時代のレポートと生成AIのレポートをAI自身に比較・分析させてみたところ、「人が書いたレポートの方が温かみが感じられる」という結果が出たんです。 人が書くと、励ましや感情のニュアンスが自然と入ります。そこで今後は、生成AIでもそうしたニュアンスが出るようプロンプトを工夫し、より納得感のある“温度”を持たせようと考えています。

—— 効率化して空いた時間は、どのように活用されているのでしょうか。

森下: レポート作成にかかる時間が短縮されたことで、その分、現場とのコミュニケーションや課題の深掘りに時間を使えるようになりました。 

柏木: 単にレポートを出すだけでは、受け手側も「言われている感」になりがちです。しかし、PMOがコミュニケーションを取って「一緒に考えようか」と対話に入ることで、改善の質が変わります。効率化の本当の利点は、創出した時間を現場とのコミュニケーションに使い、さらに改善のループを回すための時間を捻出できるようになったことだと思います。

導入から1年。成果をエビデンスで語れる組織へ

—— 生成AIレポーティングも含め、Findy Team+を導入して約1年が経ちました。開発現場に変化はありましたか?

森下: Findy Team+で分析するテーマがどんどん増えてきました。組織全体として「見て、分析して、活用して、改善する」という流れが生まれ、その機運が高まっていると感じています。 R&Dの現場では改善活動に積極的に関わっていただけるか不安でしたが、実際には「やめよう」「いらない」という声は聞いていません。

—— マネジメントや上層部への報告という観点ではいかがでしょうか。

加増: 推進する立場として、レポートを通じて「これだけ改善している」とデータで示せるようになったことは大きな前進でした。データがあることで「自分たちの活動が着実に成果につながっている」という共通認識を関係者の間で持ちやすくなりました。いつでもエビデンスを示しながら議論や説明ができることが、推進において大きな意味を持ちました。

森下: パイロットチームが属する組織では「爆速開発」を目標として掲げています。スピード感を持って開発するという方針と、Findy Team+で測定・改善していくサイクルがうまく噛み合い、シンクロしていたからこそ現場にも定着したのだと思います。

今後の展望とエンジニアへのメッセージ

—— 1年間の成果を踏まえ、2026年度の目標を教えてください。

加増: 特定の部署でのパイロット適用を通じて成果が見えてきたことから次の段階として、この「実践の仕組み」をDX・CPS本部の他部門、さらには全社へと広げていきたいと考えています。 また森下さんが構築した生成AI活用のレポート手法なども社内のLT会(短時間の発表会)などで発信し、有効な実践は広く共有していく方針です。そうした取り組みを通じて仲間を増やし、生産性向上活動の輪を広げていくことが次のチャレンジです。

—— 最後に、組織のアピールポイントや、読者へのメッセージをお願いします。

柏木: パナソニックグループは他のIT企業と比べると、ソフトウェア開発の組織能力という面ではまだ伸びしろがあると感じています。今、Findy Team+の取り組みや生成AIの活用も含めて「ソフトウェア開発者にとっても働きやすい会社」になろうとグループ全体で取り組んでいます。今日お話ししたような開発の考え方に共感頂ける方に、働く場の一つとしてパナソニックグループにも関心を持って頂けたらうれしいです。

加増: 私たちのミッションは、先進のシステム開発力を手の内化しグループ全体のビジネスモデル変革を加速させることです。事業会社在籍時には情報を手作業で集約していましたが、ツールと連携するだけでデータを可視化でき、他社との比較を通じて自分たちの立ち位置も把握しやすくなりました。そうした環境が整ったことで「次はもう少し高い水準を目指そう」といった前向きな対話も生まれやすくなりました。

森下: 今は生成AIによって事業が大きくシフトしているタイミングだと感じています。生成AIを活用することでパナソニックグループのビジネスモデルを変え、躍進できるチャンスが来ていると思います。ツールベンダーの皆さんとも連携しながら取り組みを進めていけば、再び業界をリードする第一線に立てると信じています。 

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