AI導入だけでは価値提供が速くならない──LegalOn Technologiesが可視化してわかった、アウトカムにつながる土台とプロセス再構築のポイント
AI導入だけでは価値提供が速くならない──LegalOn Technologiesが可視化してわかった、アウトカムにつながる土台とプロセス再構築のポイント

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20〜30の開発チームが並行して動く株式会社LegalOn Technologiesでは、生成AIの進化が業務の進め方にも大きな変化をもたらし始めていました。個々のエンジニアがAIツールを使いこなすだけでは、組織全体の速度に直結しない。複数チームが連携して価値を届ける体制では、「AIをどう使うか」以上に、「どうすればAIを前提に価値提供のプロセスを再構築できるか」が問われ始めていました。
こうした背景を受け、同社は2025年にAID CoE(AI-powered Development Center of Excellence)を発足。AI活用の普及、プロセス改善、ナレッジの横展開を組織横断で進めています。さらにFindy Team+を用い、AI導入前後の生産性変化やプロセス上のボトルネックを定量的に把握しながら、改善サイクルを組織として回す取り組みも始まっています。
本記事では、AID CoEが立ち上がった背景、AI導入がもたらした変化、そしてFindy Team+を起点にどのように組織改善を進めているのかを、CTOオフィスの責任者として、開発組織全体のイネーブルメントを担当している時武さんにお伺いしました。
プロフィール
時武 佑太さん
CTOオフィス 責任者
2017年 株式会社LegalForce(現LegalOn Technologies)に1人目のEMとして入社。同年10月にCTO就任。2019年「TechCrunch Tokyo CTO Night 2019」のピッチコンテストで優勝し、CTO of the yearを受賞。
2022年にCTOを退任し、エンジニアとしてファーストプロダクトをはじめ、現在ではグローバルでも活用される法務AI「LegalOn」の開発にも携わる。
2025年4月より、CTOオフィス責任者に就任。LLMを活用した開発プロセスの仕組み化・自動化により開発組織の生産性を10倍に引き上げることを目指してアメーバ式に組織を横断しながら取り組む。
生成AIの進化に追従するために──AID CoE立ち上げと組織横断の必要性
時武:AID CoEを立ち上げたのは、生成AIの進化に対して、開発組織としてうまく追従できていないという危機感があったからです。ChatGPTが出て以降、AIを活用したツールや手法はどんどん増えていきましたが、最初の頃は精度も不安定で「すごいけれど業務では使いづらい」という状態でした。
ただ、2024年に入ったあたりから状況が大きく変わりました。精度が上がって、実務でも十分に使える段階になってきたと感じています。一方で、感度の高い人は自分で試していくのに対して、日々の開発で手一杯なメンバーはどうしても余裕が持てていない状況でした。開発組織が150〜200名規模になると、個人任せでは組織全体の活用状況にばらつきが生じます。
このままだとAIの波に乗り遅れる、という焦りがありました。もともとCTOオフィスがAIツールの導入を進めていましたが、AIエージェントが実装だけでなく開発プロセスの前後にも影響するようになり、横断で支援する組織が必要だと感じるようになったんです。
そこでAI活用に特化した組織としてAID CoEを立ち上げました。最初はCTOと2名で始めていたのですが、2024年末頃から業界全体のAI活用が一気に加速したことから、本気で推進しなければならない環境になっていました。
AI活用にはセキュリティやリーガルの観点が不可欠ですが、そのあたりはデータ部門やリーガル部門が先にガイドラインを整えてくれていました。「どのレベルのデータまでLLMに入れていいか」といったガイドラインが揃っていたので、私たちは「どう広げていくか」に集中できる状態でスタートできました。
AID CoEは、“AI活用に関する駆け込み寺”のような存在を目指しています。困っているポイントはチームごとに違います。実際にメンバーとして入り込んで一緒に進めたチームもありましたし、ハンズオン会を開いたこともあります。ナレッジドキュメントを整備して、セルフサービスで情報を取れるようにしたケースもあります。状況に応じて支援の方法を変えるようにしています。
AI活用のばらつきをなくし、組織としてAIの進化に対応していけるようにする。そのためにAID CoEを立ち上げました。
AIを前提とした開発プロセスへ──価値提供までの“全体最適”を目指す取り組み
時武:AID CoEとして最初に掲げていた方針は、AIを使った開発のベストプラクティスを社内に定着させて、AI-nativeの時代でも競争力を保てる開発組織に進化していくことでした。AI駆動開発という言い方もしているのですが、単純にAIを道具として取り入れるのではなく、開発のプロセスやプラクティスそのものをAI前提で組み替えて、価値提供の速度や品質で非連続な成長を実現したいというイメージです。
ただ、半年ほど推進してみて、当初の想定よりもはるかに“土台”が重要だと感じるようになりました。AIを導入して、全員が使いこなせるようになればゴールに到達できるかというと、実際はそうではありませんでした。
というのも、開発の土台になる文化やプロセス、マネジメントのあり方があって、その上にAIが乗っかります。うちの組織も土台がある程度できてきていると思っていましたが、AIを最大限活かすという観点では、まだまだ伸びしろがあるというのが率直なところです。
実際、Cursorの導入を進めた3月頃は、業務でAIエージェントを使っているメンバーは10%未満でした。直近だと95%を超えています。普及という意味では、この半年で明確に成果は出ましたし、使っているエンジニアに話を聞くと「生産性が上がった」とほぼ全員が言います。ただ、プロダクトのリリース数や売上にどれくらい繋がったかと言われると、思ったほどインパクトが出ていないという感触がありました。
当初は、イメージとしてはまず“2倍”くらいを狙いたかったんです。例えば1年間で100個リリースできていたものが、AIを活用することで200個出せるような世界観を描いていました。でも現時点ではそこまではいかない。
理由を紐解いていくと、AIでコーディングは明らかに速くなる一方で、前後のコミュニケーションや仕様の詰め、レビューといった部分でオーバーヘッドが生まれていて、結果的にリリースまでのスピードが思うほど上がっていない、という状態だったんです。そもそも開発プロセス全体の中で実装が占める割合は20%ほどしかありません。残りの80%の部分──企画、要件整理、意思決定、レビュー、検証、リリースの調整──がボトルネックになると、全体が速くなるわけではない。
AI導入当初からブログでも書いていたんですが、「AIで効率化を図りたいなら実装だけでなく、工程全体に横に染み出すように改善していく必要がある」と考えていました。半年やってきて、その仮説は正しかったなと感じています。
いまでは、AI導入を進めながら、文化やマネジメントのやり方、チームの構造など、組織の“土台”をしっかり整える必要があることを強く感じています。エンジニアが「自分のコーディングが楽になったから生産性が上がった」と思っている状態にとどまってしまうと、組織全体の成果には繋がりません。価値提供のスピードを上げるには、もっと広い視野でプロセス全体を見て、どこにボトルネックがあるのか、どう改善すべきかを考える必要があります。
そこには、チームの組み方やコミュニケーションのあり方、レビューのルール、場合によっては組織構造の見直しも関わってきます。AIだけで解決できる話ではないので、文化やマネジメントの側面からもアプローチしていかないと、AIを最大限活かすことは難しいと感じています。
AI時代は、アジャイル開発のサイクルをさらに高速で、かつ並列で回せるようになるはずなんです。ただ現状では、サイクルを回し切るための組織的な準備がまだ十分ではない。だからこそ、ツールやAI活用だけではなく、開発組織全体をどう最適化していくかをセットで考えながら組織づくりをしていきたいと考えています。
コード生成からSDD、イノベーター制度まで──AI活用を文化として根付かせるための実践
時武:AI活用を組織全体に広げていくうえで、AID CoEではいくつかの取り組みを進めています。
プロセス改善でいうと、フロントエンドでは、社内のデザインシステムをちゃんとAI側にも理解してもらえるようにコンテキストを工夫して、Figmaのデザインからほぼそのままフロントエンドコードを生成する方法を確立しました。デザイナーが作ったページをAIに“食べさせる”ようにすると、再現度としては90〜95%くらいでコードが出てくる状態です。かなり綺麗に再現されます。ただ、ここは日常的に使ってくれる人とまだそこまで手が伸びていない人で分かれてしまっているので、より定着させていきたいと思っています。
もう一つ、複数チームで実践しているのがSpec-Driven Development(SDD)です。弊社のプロダクトは業務ドメインが複雑で、実際に業務を経験していないと理解が難しいケースが多いのですが、AIがそのドメイン知識を把握したうえでコード生成できるように、プロセスを整理するフレームワークとしてSDDを試しています。やってみると、品質を保ちながら再現性高く作れるようにはなってきていて、「確かにこれは精度が出るな」という実感も得られています。
ただ、SDDはプロセスが重厚なので、これを組織全体に一気に広げられるかというと簡単ではありません。うまく回っているチームもある一方で、全チームに導入するには難易度が高いなという印象もあります。とはいえ、複雑なドメインを扱う「LegalOn」のようなプロダクトには、とても相性が良い面もあるので、どの部分を取り入れると効果的なのかは引き続き検証していきたいと思っています。
文化づくりの施策としては、「AID Innovators」という仕組みを設けています。積極的にAI活用を進めてくれている人たちを社内で“認定”する形で声をかけて、定期的に集まる場をつくっているんです。イノベーターズの人たちが所属するチームで起きていることや、新しく試してうまくいったこと、逆にうまくいかなかったことなどを共有してもらって、それをAID CoE側で整理して全社に展開しています。イノベーターズは「自分たちで広げていってください」というよりも、「日々の業務の中でどんどん活用を探求してください。その知見を組織側で拾って横展開します」という立ち位置にしています。
一部のチームや一部の人がうまく使えるだけでは組織的な成果には繋がりません。こういった取り組みによって、AI活用を単発の取り組みで終わらせず、文化として根づかせていくことを目指しています。
肌感ではなくデータで判断する──Findy Team+で可視化した変化とプロセス改善の糸口
時武:AI活用を進めるうえで、効果測定は絶対に外せないポイントだと思っています。AI活用は「どれくらい成果が出たのか」がとても判断しづらい領域で、肌感だけに頼ると、どうしても曖昧になってしまいます。特にAID CoEのようなイネーブルメント系の組織は、成果が可視化されないと過小評価されやすい側面もあります。今年度はAI活用に特化した施策を組んでいるため、時系列で定量的に効果を測定できる基盤が必須だと考えていました。
開発組織全体としても、自分たちの開発プロセスがどれくらい効率的に回っているのか、どこにボトルネックがあるのかを探るための基盤が必要でした。AI活用に投資をする以上、それがどの程度効いたのかを客観的に説明できる材料がないと、組織として投資判断もしづらくなってしまいます。
Findy Team+を導入した背景もそこにあります。AI活用の効果をきちんと可視化するために、まずは何でもいいから生産性の可視化をしなければいけない、という考えがありました。そのうえで、もともとトライアルで使ったことがあったので、どういうデータが見られるのか、どんな使い方ができるのかがイメージしやすかったこともあり、導入候補として真っ先に上がりました。
使いやすさという意味でも、Findy Team+はスムーズでした。GitHubとの連携も簡単でしたし、画面上の可視化も見やすくて、数値の変化や傾向を把握しやすかったです。それまで自社では開発活動を可視化する仕組みが整っていなかったので、「コミットからPRオープンまで」「PR作成数」「リードタイム」といった粒度のデータを取れるようになったのは大きかったと思っています。

実際に使い始めてみると、いろいろな気づきがありました。AI導入後、プルリクの作成数が明らかに増えたチームが出てきたのですが、同時にレビューのリードタイムが悪化しているという傾向も見えてきました。「レビューに時間がかかっている」という声はあったのですが、肌感だけだと見落としがちな相関関係が明確化したので、次の仮説が立てやすいです。
また、AIの活用度が高いメンバーはやはり数字にも表れていました。プルリク数の多さとレビュー対応の速さを両立しているメンバーがいて、そういう人たちをロールモデルとしてチームに展開していこうという方針にもつながりました。
Findy Team+のサイクルタイム分析は特によく見ています。AI導入の前後でどう変わったのか、特定のチームだけでなく組織全体でどの工程がボトルネックになっているのかがわかるので、施策の優先順位を決めるのにも役立ちます。経営への報告にも使えるという意味でも、大きな助けになっています。


AIの活用は、導入しただけでは成果が出る領域ではありません。開発プロセスの課題を見つけて、地道に解決していく必要があります。その意味でも、Findy Team+のデータはAID CoEの活動を支える“土台”になっています。
AI活用が進んだことで、トークン消費や利用料が増えてコストの話も出てきますが、「その投資でどれだけのアウトプットを出しているのか」を説明できるかどうかは非常に重要です。Findy Team+があることで、そこをきちんと説明できるようになるのは大きな意味があると思っています。
AI-native時代を戦う組織へ──文化・基盤・マネジメントのアップデートとFindy Team+の役割
時武:今後は、AI-nativeの時代において最大限の価値が出せるような組織づくりにもっと力を入れていきたいと考えています。ツールや仕組みを導入するだけでは不十分で、開発の土台になる文化やマインドセット、あとはCI/CD基盤といったハード面も含めて、各組織に働きかけていく必要があると感じています。
文化のところは、チームの現状を把握したり、メンバーごとのフォローが必要かどうかを判断したりするうえでも、AIをどう活かすかをちゃんと理解してもらって、開発組織全体でよいモメンタムを形成していきたいです。
Findy Team+のデータは、そうした取り組みを進めるうえで重要な指針になると思っています。私たちが今向かっている方向性がズレていないかどうか、直近の取り組みが実際に数値として良い変化につながっているのかを確認するのに役立ちます。特にサイクルタイム分析などは、改善の優先順位を判断するうえでも効果的です。
また、バッジ機能のように、相対的にどれだけ優位性があるかを客観的に見られるのも良いと感じています。業界全体の中で、自社のプラクティスがどの程度洗練されているのか、という視点でも活用できると思っています。
そのための土台として、Findy Team+は今後も活用し続けたいと思っています。
AIを自然に使いこなす文化をつくる
時武:これからは、エンジニアに限らず開発組織全体がAIを自然に使いこなし、AIを前提とした開発プロセスが文化として根づいている状態を目指したいと思っています。
LegalOn Technologiesの面白いところは、AID CoEだけでなく、各チームの中にもAI活用に積極的なメンバーが多くいる点です。複数の場所で同時にAI活用が進んでいるので、規模が大きい組織で難しさもありますが、いろいろな専門性を持ったメンバーと議論しながら、自分の裁量で取り組みを進めていけます。
そうした中で、新しいやり方に対して斜に構えず、素直にアンラーニングできる人と一緒に働きたいです。AI時代の開発は技術だけでなく、コミュニケーションの取り方や周りを巻き込むスキルも重要になります。チーム内外の人と連携しながら動ける人は、特に力を発揮しやすいと思います。
技術はもちろん、そういったソフトスキルに自信がある人・チャレンジしてみたい人はぜひ話を聞きに来てください!
※AI戦略支援SaaS「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。
https://jp.findy-team.io/
20〜30の開発チームが並行して動く株式会社LegalOn Technologiesでは、生成AIの進化が業務の進め方にも大きな変化をもたらし始めていました。個々のエンジニアがAIツールを使いこなすだけでは、組織全体の速度に直結しない。複数チームが連携して価値を届ける体制では、「AIをどう使うか」以上に、「どうすればAIを前提に価値提供のプロセスを再構築できるか」が問われ始めていました。
こうした背景を受け、同社は2025年にAID CoE(AI-powered Development Center of Excellence)を発足。AI活用の普及、プロセス改善、ナレッジの横展開を組織横断で進めています。さらにFindy Team+を用い、AI導入前後の生産性変化やプロセス上のボトルネックを定量的に把握しながら、改善サイクルを組織として回す取り組みも始まっています。
本記事では、AID CoEが立ち上がった背景、AI導入がもたらした変化、そしてFindy Team+を起点にどのように組織改善を進めているのかを、CTOオフィスの責任者として、開発組織全体のイネーブルメントを担当している時武さんにお伺いしました。
プロフィール
時武 佑太さん
CTOオフィス 責任者
2017年 株式会社LegalForce(現LegalOn Technologies)に1人目のEMとして入社。同年10月にCTO就任。2019年「TechCrunch Tokyo CTO Night 2019」のピッチコンテストで優勝し、CTO of the yearを受賞。
2022年にCTOを退任し、エンジニアとしてファーストプロダクトをはじめ、現在ではグローバルでも活用される法務AI「LegalOn」の開発にも携わる。
2025年4月より、CTOオフィス責任者に就任。LLMを活用した開発プロセスの仕組み化・自動化により開発組織の生産性を10倍に引き上げることを目指してアメーバ式に組織を横断しながら取り組む。
生成AIの進化に追従するために──AID CoE立ち上げと組織横断の必要性
時武:AID CoEを立ち上げたのは、生成AIの進化に対して、開発組織としてうまく追従できていないという危機感があったからです。ChatGPTが出て以降、AIを活用したツールや手法はどんどん増えていきましたが、最初の頃は精度も不安定で「すごいけれど業務では使いづらい」という状態でした。
ただ、2024年に入ったあたりから状況が大きく変わりました。精度が上がって、実務でも十分に使える段階になってきたと感じています。一方で、感度の高い人は自分で試していくのに対して、日々の開発で手一杯なメンバーはどうしても余裕が持てていない状況でした。開発組織が150〜200名規模になると、個人任せでは組織全体の活用状況にばらつきが生じます。
このままだとAIの波に乗り遅れる、という焦りがありました。もともとCTOオフィスがAIツールの導入を進めていましたが、AIエージェントが実装だけでなく開発プロセスの前後にも影響するようになり、横断で支援する組織が必要だと感じるようになったんです。
そこでAI活用に特化した組織としてAID CoEを立ち上げました。最初はCTOと2名で始めていたのですが、2024年末頃から業界全体のAI活用が一気に加速したことから、本気で推進しなければならない環境になっていました。
AI活用にはセキュリティやリーガルの観点が不可欠ですが、そのあたりはデータ部門やリーガル部門が先にガイドラインを整えてくれていました。「どのレベルのデータまでLLMに入れていいか」といったガイドラインが揃っていたので、私たちは「どう広げていくか」に集中できる状態でスタートできました。
AID CoEは、“AI活用に関する駆け込み寺”のような存在を目指しています。困っているポイントはチームごとに違います。実際にメンバーとして入り込んで一緒に進めたチームもありましたし、ハンズオン会を開いたこともあります。ナレッジドキュメントを整備して、セルフサービスで情報を取れるようにしたケースもあります。状況に応じて支援の方法を変えるようにしています。
AI活用のばらつきをなくし、組織としてAIの進化に対応していけるようにする。そのためにAID CoEを立ち上げました。
AIを前提とした開発プロセスへ──価値提供までの“全体最適”を目指す取り組み
時武:AID CoEとして最初に掲げていた方針は、AIを使った開発のベストプラクティスを社内に定着させて、AI-nativeの時代でも競争力を保てる開発組織に進化していくことでした。AI駆動開発という言い方もしているのですが、単純にAIを道具として取り入れるのではなく、開発のプロセスやプラクティスそのものをAI前提で組み替えて、価値提供の速度や品質で非連続な成長を実現したいというイメージです。
ただ、半年ほど推進してみて、当初の想定よりもはるかに“土台”が重要だと感じるようになりました。AIを導入して、全員が使いこなせるようになればゴールに到達できるかというと、実際はそうではありませんでした。
というのも、開発の土台になる文化やプロセス、マネジメントのあり方があって、その上にAIが乗っかります。うちの組織も土台がある程度できてきていると思っていましたが、AIを最大限活かすという観点では、まだまだ伸びしろがあるというのが率直なところです。
実際、Cursorの導入を進めた3月頃は、業務でAIエージェントを使っているメンバーは10%未満でした。直近だと95%を超えています。普及という意味では、この半年で明確に成果は出ましたし、使っているエンジニアに話を聞くと「生産性が上がった」とほぼ全員が言います。ただ、プロダクトのリリース数や売上にどれくらい繋がったかと言われると、思ったほどインパクトが出ていないという感触がありました。
当初は、イメージとしてはまず“2倍”くらいを狙いたかったんです。例えば1年間で100個リリースできていたものが、AIを活用することで200個出せるような世界観を描いていました。でも現時点ではそこまではいかない。
理由を紐解いていくと、AIでコーディングは明らかに速くなる一方で、前後のコミュニケーションや仕様の詰め、レビューといった部分でオーバーヘッドが生まれていて、結果的にリリースまでのスピードが思うほど上がっていない、という状態だったんです。そもそも開発プロセス全体の中で実装が占める割合は20%ほどしかありません。残りの80%の部分──企画、要件整理、意思決定、レビュー、検証、リリースの調整──がボトルネックになると、全体が速くなるわけではない。
AI導入当初からブログでも書いていたんですが、「AIで効率化を図りたいなら実装だけでなく、工程全体に横に染み出すように改善していく必要がある」と考えていました。半年やってきて、その仮説は正しかったなと感じています。
いまでは、AI導入を進めながら、文化やマネジメントのやり方、チームの構造など、組織の“土台”をしっかり整える必要があることを強く感じています。エンジニアが「自分のコーディングが楽になったから生産性が上がった」と思っている状態にとどまってしまうと、組織全体の成果には繋がりません。価値提供のスピードを上げるには、もっと広い視野でプロセス全体を見て、どこにボトルネックがあるのか、どう改善すべきかを考える必要があります。
そこには、チームの組み方やコミュニケーションのあり方、レビューのルール、場合によっては組織構造の見直しも関わってきます。AIだけで解決できる話ではないので、文化やマネジメントの側面からもアプローチしていかないと、AIを最大限活かすことは難しいと感じています。
AI時代は、アジャイル開発のサイクルをさらに高速で、かつ並列で回せるようになるはずなんです。ただ現状では、サイクルを回し切るための組織的な準備がまだ十分ではない。だからこそ、ツールやAI活用だけではなく、開発組織全体をどう最適化していくかをセットで考えながら組織づくりをしていきたいと考えています。
コード生成からSDD、イノベーター制度まで──AI活用を文化として根付かせるための実践
時武:AI活用を組織全体に広げていくうえで、AID CoEではいくつかの取り組みを進めています。
プロセス改善でいうと、フロントエンドでは、社内のデザインシステムをちゃんとAI側にも理解してもらえるようにコンテキストを工夫して、Figmaのデザインからほぼそのままフロントエンドコードを生成する方法を確立しました。デザイナーが作ったページをAIに“食べさせる”ようにすると、再現度としては90〜95%くらいでコードが出てくる状態です。かなり綺麗に再現されます。ただ、ここは日常的に使ってくれる人とまだそこまで手が伸びていない人で分かれてしまっているので、より定着させていきたいと思っています。
もう一つ、複数チームで実践しているのがSpec-Driven Development(SDD)です。弊社のプロダクトは業務ドメインが複雑で、実際に業務を経験していないと理解が難しいケースが多いのですが、AIがそのドメイン知識を把握したうえでコード生成できるように、プロセスを整理するフレームワークとしてSDDを試しています。やってみると、品質を保ちながら再現性高く作れるようにはなってきていて、「確かにこれは精度が出るな」という実感も得られています。
ただ、SDDはプロセスが重厚なので、これを組織全体に一気に広げられるかというと簡単ではありません。うまく回っているチームもある一方で、全チームに導入するには難易度が高いなという印象もあります。とはいえ、複雑なドメインを扱う「LegalOn」のようなプロダクトには、とても相性が良い面もあるので、どの部分を取り入れると効果的なのかは引き続き検証していきたいと思っています。
文化づくりの施策としては、「AID Innovators」という仕組みを設けています。積極的にAI活用を進めてくれている人たちを社内で“認定”する形で声をかけて、定期的に集まる場をつくっているんです。イノベーターズの人たちが所属するチームで起きていることや、新しく試してうまくいったこと、逆にうまくいかなかったことなどを共有してもらって、それをAID CoE側で整理して全社に展開しています。イノベーターズは「自分たちで広げていってください」というよりも、「日々の業務の中でどんどん活用を探求してください。その知見を組織側で拾って横展開します」という立ち位置にしています。
一部のチームや一部の人がうまく使えるだけでは組織的な成果には繋がりません。こういった取り組みによって、AI活用を単発の取り組みで終わらせず、文化として根づかせていくことを目指しています。
肌感ではなくデータで判断する──Findy Team+で可視化した変化とプロセス改善の糸口
時武:AI活用を進めるうえで、効果測定は絶対に外せないポイントだと思っています。AI活用は「どれくらい成果が出たのか」がとても判断しづらい領域で、肌感だけに頼ると、どうしても曖昧になってしまいます。特にAID CoEのようなイネーブルメント系の組織は、成果が可視化されないと過小評価されやすい側面もあります。今年度はAI活用に特化した施策を組んでいるため、時系列で定量的に効果を測定できる基盤が必須だと考えていました。
開発組織全体としても、自分たちの開発プロセスがどれくらい効率的に回っているのか、どこにボトルネックがあるのかを探るための基盤が必要でした。AI活用に投資をする以上、それがどの程度効いたのかを客観的に説明できる材料がないと、組織として投資判断もしづらくなってしまいます。
Findy Team+を導入した背景もそこにあります。AI活用の効果をきちんと可視化するために、まずは何でもいいから生産性の可視化をしなければいけない、という考えがありました。そのうえで、もともとトライアルで使ったことがあったので、どういうデータが見られるのか、どんな使い方ができるのかがイメージしやすかったこともあり、導入候補として真っ先に上がりました。
使いやすさという意味でも、Findy Team+はスムーズでした。GitHubとの連携も簡単でしたし、画面上の可視化も見やすくて、数値の変化や傾向を把握しやすかったです。それまで自社では開発活動を可視化する仕組みが整っていなかったので、「コミットからPRオープンまで」「PR作成数」「リードタイム」といった粒度のデータを取れるようになったのは大きかったと思っています。

実際に使い始めてみると、いろいろな気づきがありました。AI導入後、プルリクの作成数が明らかに増えたチームが出てきたのですが、同時にレビューのリードタイムが悪化しているという傾向も見えてきました。「レビューに時間がかかっている」という声はあったのですが、肌感だけだと見落としがちな相関関係が明確化したので、次の仮説が立てやすいです。
また、AIの活用度が高いメンバーはやはり数字にも表れていました。プルリク数の多さとレビュー対応の速さを両立しているメンバーがいて、そういう人たちをロールモデルとしてチームに展開していこうという方針にもつながりました。
Findy Team+のサイクルタイム分析は特によく見ています。AI導入の前後でどう変わったのか、特定のチームだけでなく組織全体でどの工程がボトルネックになっているのかがわかるので、施策の優先順位を決めるのにも役立ちます。経営への報告にも使えるという意味でも、大きな助けになっています。


AIの活用は、導入しただけでは成果が出る領域ではありません。開発プロセスの課題を見つけて、地道に解決していく必要があります。その意味でも、Findy Team+のデータはAID CoEの活動を支える“土台”になっています。
AI活用が進んだことで、トークン消費や利用料が増えてコストの話も出てきますが、「その投資でどれだけのアウトプットを出しているのか」を説明できるかどうかは非常に重要です。Findy Team+があることで、そこをきちんと説明できるようになるのは大きな意味があると思っています。
AI-native時代を戦う組織へ──文化・基盤・マネジメントのアップデートとFindy Team+の役割
時武:今後は、AI-nativeの時代において最大限の価値が出せるような組織づくりにもっと力を入れていきたいと考えています。ツールや仕組みを導入するだけでは不十分で、開発の土台になる文化やマインドセット、あとはCI/CD基盤といったハード面も含めて、各組織に働きかけていく必要があると感じています。
文化のところは、チームの現状を把握したり、メンバーごとのフォローが必要かどうかを判断したりするうえでも、AIをどう活かすかをちゃんと理解してもらって、開発組織全体でよいモメンタムを形成していきたいです。
Findy Team+のデータは、そうした取り組みを進めるうえで重要な指針になると思っています。私たちが今向かっている方向性がズレていないかどうか、直近の取り組みが実際に数値として良い変化につながっているのかを確認するのに役立ちます。特にサイクルタイム分析などは、改善の優先順位を判断するうえでも効果的です。
また、バッジ機能のように、相対的にどれだけ優位性があるかを客観的に見られるのも良いと感じています。業界全体の中で、自社のプラクティスがどの程度洗練されているのか、という視点でも活用できると思っています。
そのための土台として、Findy Team+は今後も活用し続けたいと思っています。
AIを自然に使いこなす文化をつくる
時武:これからは、エンジニアに限らず開発組織全体がAIを自然に使いこなし、AIを前提とした開発プロセスが文化として根づいている状態を目指したいと思っています。
LegalOn Technologiesの面白いところは、AID CoEだけでなく、各チームの中にもAI活用に積極的なメンバーが多くいる点です。複数の場所で同時にAI活用が進んでいるので、規模が大きい組織で難しさもありますが、いろいろな専門性を持ったメンバーと議論しながら、自分の裁量で取り組みを進めていけます。
そうした中で、新しいやり方に対して斜に構えず、素直にアンラーニングできる人と一緒に働きたいです。AI時代の開発は技術だけでなく、コミュニケーションの取り方や周りを巻き込むスキルも重要になります。チーム内外の人と連携しながら動ける人は、特に力を発揮しやすいと思います。
技術はもちろん、そういったソフトスキルに自信がある人・チャレンジしてみたい人はぜひ話を聞きに来てください!
※AI戦略支援SaaS「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。
https://jp.findy-team.io/
AI導入だけでは価値提供が速くならない──LegalOn Technologiesが可視化してわかった、アウトカムにつながる土台とプロセス再構築のポイント

20〜30の開発チームが並行して動く株式会社LegalOn Technologiesでは、生成AIの進化が業務の進め方にも大きな変化をもたらし始めていました。個々のエンジニアがAIツールを使いこなすだけでは、組織全体の速度に直結しない。複数チームが連携して価値を届ける体制では、「AIをどう使うか」以上に、「どうすればAIを前提に価値提供のプロセスを再構築できるか」が問われ始めていました。
こうした背景を受け、同社は2025年にAID CoE(AI-powered Development Center of Excellence)を発足。AI活用の普及、プロセス改善、ナレッジの横展開を組織横断で進めています。さらにFindy Team+を用い、AI導入前後の生産性変化やプロセス上のボトルネックを定量的に把握しながら、改善サイクルを組織として回す取り組みも始まっています。
本記事では、AID CoEが立ち上がった背景、AI導入がもたらした変化、そしてFindy Team+を起点にどのように組織改善を進めているのかを、CTOオフィスの責任者として、開発組織全体のイネーブルメントを担当している時武さんにお伺いしました。
プロフィール
時武 佑太さん
CTOオフィス 責任者
2017年 株式会社LegalForce(現LegalOn Technologies)に1人目のEMとして入社。同年10月にCTO就任。2019年「TechCrunch Tokyo CTO Night 2019」のピッチコンテストで優勝し、CTO of the yearを受賞。
2022年にCTOを退任し、エンジニアとしてファーストプロダクトをはじめ、現在ではグローバルでも活用される法務AI「LegalOn」の開発にも携わる。
2025年4月より、CTOオフィス責任者に就任。LLMを活用した開発プロセスの仕組み化・自動化により開発組織の生産性を10倍に引き上げることを目指してアメーバ式に組織を横断しながら取り組む。
生成AIの進化に追従するために──AID CoE立ち上げと組織横断の必要性
時武:AID CoEを立ち上げたのは、生成AIの進化に対して、開発組織としてうまく追従できていないという危機感があったからです。ChatGPTが出て以降、AIを活用したツールや手法はどんどん増えていきましたが、最初の頃は精度も不安定で「すごいけれど業務では使いづらい」という状態でした。
ただ、2024年に入ったあたりから状況が大きく変わりました。精度が上がって、実務でも十分に使える段階になってきたと感じています。一方で、感度の高い人は自分で試していくのに対して、日々の開発で手一杯なメンバーはどうしても余裕が持てていない状況でした。開発組織が150〜200名規模になると、個人任せでは組織全体の活用状況にばらつきが生じます。
このままだとAIの波に乗り遅れる、という焦りがありました。もともとCTOオフィスがAIツールの導入を進めていましたが、AIエージェントが実装だけでなく開発プロセスの前後にも影響するようになり、横断で支援する組織が必要だと感じるようになったんです。
そこでAI活用に特化した組織としてAID CoEを立ち上げました。最初はCTOと2名で始めていたのですが、2024年末頃から業界全体のAI活用が一気に加速したことから、本気で推進しなければならない環境になっていました。
AI活用にはセキュリティやリーガルの観点が不可欠ですが、そのあたりはデータ部門やリーガル部門が先にガイドラインを整えてくれていました。「どのレベルのデータまでLLMに入れていいか」といったガイドラインが揃っていたので、私たちは「どう広げていくか」に集中できる状態でスタートできました。
AID CoEは、“AI活用に関する駆け込み寺”のような存在を目指しています。困っているポイントはチームごとに違います。実際にメンバーとして入り込んで一緒に進めたチームもありましたし、ハンズオン会を開いたこともあります。ナレッジドキュメントを整備して、セルフサービスで情報を取れるようにしたケースもあります。状況に応じて支援の方法を変えるようにしています。
AI活用のばらつきをなくし、組織としてAIの進化に対応していけるようにする。そのためにAID CoEを立ち上げました。
AIを前提とした開発プロセスへ──価値提供までの“全体最適”を目指す取り組み
時武:AID CoEとして最初に掲げていた方針は、AIを使った開発のベストプラクティスを社内に定着させて、AI-nativeの時代でも競争力を保てる開発組織に進化していくことでした。AI駆動開発という言い方もしているのですが、単純にAIを道具として取り入れるのではなく、開発のプロセスやプラクティスそのものをAI前提で組み替えて、価値提供の速度や品質で非連続な成長を実現したいというイメージです。
ただ、半年ほど推進してみて、当初の想定よりもはるかに“土台”が重要だと感じるようになりました。AIを導入して、全員が使いこなせるようになればゴールに到達できるかというと、実際はそうではありませんでした。
というのも、開発の土台になる文化やプロセス、マネジメントのあり方があって、その上にAIが乗っかります。うちの組織も土台がある程度できてきていると思っていましたが、AIを最大限活かすという観点では、まだまだ伸びしろがあるというのが率直なところです。
実際、Cursorの導入を進めた3月頃は、業務でAIエージェントを使っているメンバーは10%未満でした。直近だと95%を超えています。普及という意味では、この半年で明確に成果は出ましたし、使っているエンジニアに話を聞くと「生産性が上がった」とほぼ全員が言います。ただ、プロダクトのリリース数や売上にどれくらい繋がったかと言われると、思ったほどインパクトが出ていないという感触がありました。
当初は、イメージとしてはまず“2倍”くらいを狙いたかったんです。例えば1年間で100個リリースできていたものが、AIを活用することで200個出せるような世界観を描いていました。でも現時点ではそこまではいかない。
理由を紐解いていくと、AIでコーディングは明らかに速くなる一方で、前後のコミュニケーションや仕様の詰め、レビューといった部分でオーバーヘッドが生まれていて、結果的にリリースまでのスピードが思うほど上がっていない、という状態だったんです。そもそも開発プロセス全体の中で実装が占める割合は20%ほどしかありません。残りの80%の部分──企画、要件整理、意思決定、レビュー、検証、リリースの調整──がボトルネックになると、全体が速くなるわけではない。
AI導入当初からブログでも書いていたんですが、「AIで効率化を図りたいなら実装だけでなく、工程全体に横に染み出すように改善していく必要がある」と考えていました。半年やってきて、その仮説は正しかったなと感じています。
いまでは、AI導入を進めながら、文化やマネジメントのやり方、チームの構造など、組織の“土台”をしっかり整える必要があることを強く感じています。エンジニアが「自分のコーディングが楽になったから生産性が上がった」と思っている状態にとどまってしまうと、組織全体の成果には繋がりません。価値提供のスピードを上げるには、もっと広い視野でプロセス全体を見て、どこにボトルネックがあるのか、どう改善すべきかを考える必要があります。
そこには、チームの組み方やコミュニケーションのあり方、レビューのルール、場合によっては組織構造の見直しも関わってきます。AIだけで解決できる話ではないので、文化やマネジメントの側面からもアプローチしていかないと、AIを最大限活かすことは難しいと感じています。
AI時代は、アジャイル開発のサイクルをさらに高速で、かつ並列で回せるようになるはずなんです。ただ現状では、サイクルを回し切るための組織的な準備がまだ十分ではない。だからこそ、ツールやAI活用だけではなく、開発組織全体をどう最適化していくかをセットで考えながら組織づくりをしていきたいと考えています。
コード生成からSDD、イノベーター制度まで──AI活用を文化として根付かせるための実践
時武:AI活用を組織全体に広げていくうえで、AID CoEではいくつかの取り組みを進めています。
プロセス改善でいうと、フロントエンドでは、社内のデザインシステムをちゃんとAI側にも理解してもらえるようにコンテキストを工夫して、Figmaのデザインからほぼそのままフロントエンドコードを生成する方法を確立しました。デザイナーが作ったページをAIに“食べさせる”ようにすると、再現度としては90〜95%くらいでコードが出てくる状態です。かなり綺麗に再現されます。ただ、ここは日常的に使ってくれる人とまだそこまで手が伸びていない人で分かれてしまっているので、より定着させていきたいと思っています。
もう一つ、複数チームで実践しているのがSpec-Driven Development(SDD)です。弊社のプロダクトは業務ドメインが複雑で、実際に業務を経験していないと理解が難しいケースが多いのですが、AIがそのドメイン知識を把握したうえでコード生成できるように、プロセスを整理するフレームワークとしてSDDを試しています。やってみると、品質を保ちながら再現性高く作れるようにはなってきていて、「確かにこれは精度が出るな」という実感も得られています。
ただ、SDDはプロセスが重厚なので、これを組織全体に一気に広げられるかというと簡単ではありません。うまく回っているチームもある一方で、全チームに導入するには難易度が高いなという印象もあります。とはいえ、複雑なドメインを扱う「LegalOn」のようなプロダクトには、とても相性が良い面もあるので、どの部分を取り入れると効果的なのかは引き続き検証していきたいと思っています。
文化づくりの施策としては、「AID Innovators」という仕組みを設けています。積極的にAI活用を進めてくれている人たちを社内で“認定”する形で声をかけて、定期的に集まる場をつくっているんです。イノベーターズの人たちが所属するチームで起きていることや、新しく試してうまくいったこと、逆にうまくいかなかったことなどを共有してもらって、それをAID CoE側で整理して全社に展開しています。イノベーターズは「自分たちで広げていってください」というよりも、「日々の業務の中でどんどん活用を探求してください。その知見を組織側で拾って横展開します」という立ち位置にしています。
一部のチームや一部の人がうまく使えるだけでは組織的な成果には繋がりません。こういった取り組みによって、AI活用を単発の取り組みで終わらせず、文化として根づかせていくことを目指しています。
肌感ではなくデータで判断する──Findy Team+で可視化した変化とプロセス改善の糸口
時武:AI活用を進めるうえで、効果測定は絶対に外せないポイントだと思っています。AI活用は「どれくらい成果が出たのか」がとても判断しづらい領域で、肌感だけに頼ると、どうしても曖昧になってしまいます。特にAID CoEのようなイネーブルメント系の組織は、成果が可視化されないと過小評価されやすい側面もあります。今年度はAI活用に特化した施策を組んでいるため、時系列で定量的に効果を測定できる基盤が必須だと考えていました。
開発組織全体としても、自分たちの開発プロセスがどれくらい効率的に回っているのか、どこにボトルネックがあるのかを探るための基盤が必要でした。AI活用に投資をする以上、それがどの程度効いたのかを客観的に説明できる材料がないと、組織として投資判断もしづらくなってしまいます。
Findy Team+を導入した背景もそこにあります。AI活用の効果をきちんと可視化するために、まずは何でもいいから生産性の可視化をしなければいけない、という考えがありました。そのうえで、もともとトライアルで使ったことがあったので、どういうデータが見られるのか、どんな使い方ができるのかがイメージしやすかったこともあり、導入候補として真っ先に上がりました。
使いやすさという意味でも、Findy Team+はスムーズでした。GitHubとの連携も簡単でしたし、画面上の可視化も見やすくて、数値の変化や傾向を把握しやすかったです。それまで自社では開発活動を可視化する仕組みが整っていなかったので、「コミットからPRオープンまで」「PR作成数」「リードタイム」といった粒度のデータを取れるようになったのは大きかったと思っています。

実際に使い始めてみると、いろいろな気づきがありました。AI導入後、プルリクの作成数が明らかに増えたチームが出てきたのですが、同時にレビューのリードタイムが悪化しているという傾向も見えてきました。「レビューに時間がかかっている」という声はあったのですが、肌感だけだと見落としがちな相関関係が明確化したので、次の仮説が立てやすいです。
また、AIの活用度が高いメンバーはやはり数字にも表れていました。プルリク数の多さとレビュー対応の速さを両立しているメンバーがいて、そういう人たちをロールモデルとしてチームに展開していこうという方針にもつながりました。
Findy Team+のサイクルタイム分析は特によく見ています。AI導入の前後でどう変わったのか、特定のチームだけでなく組織全体でどの工程がボトルネックになっているのかがわかるので、施策の優先順位を決めるのにも役立ちます。経営への報告にも使えるという意味でも、大きな助けになっています。


AIの活用は、導入しただけでは成果が出る領域ではありません。開発プロセスの課題を見つけて、地道に解決していく必要があります。その意味でも、Findy Team+のデータはAID CoEの活動を支える“土台”になっています。
AI活用が進んだことで、トークン消費や利用料が増えてコストの話も出てきますが、「その投資でどれだけのアウトプットを出しているのか」を説明できるかどうかは非常に重要です。Findy Team+があることで、そこをきちんと説明できるようになるのは大きな意味があると思っています。
AI-native時代を戦う組織へ──文化・基盤・マネジメントのアップデートとFindy Team+の役割
時武:今後は、AI-nativeの時代において最大限の価値が出せるような組織づくりにもっと力を入れていきたいと考えています。ツールや仕組みを導入するだけでは不十分で、開発の土台になる文化やマインドセット、あとはCI/CD基盤といったハード面も含めて、各組織に働きかけていく必要があると感じています。
文化のところは、チームの現状を把握したり、メンバーごとのフォローが必要かどうかを判断したりするうえでも、AIをどう活かすかをちゃんと理解してもらって、開発組織全体でよいモメンタムを形成していきたいです。
Findy Team+のデータは、そうした取り組みを進めるうえで重要な指針になると思っています。私たちが今向かっている方向性がズレていないかどうか、直近の取り組みが実際に数値として良い変化につながっているのかを確認するのに役立ちます。特にサイクルタイム分析などは、改善の優先順位を判断するうえでも効果的です。
また、バッジ機能のように、相対的にどれだけ優位性があるかを客観的に見られるのも良いと感じています。業界全体の中で、自社のプラクティスがどの程度洗練されているのか、という視点でも活用できると思っています。
そのための土台として、Findy Team+は今後も活用し続けたいと思っています。
AIを自然に使いこなす文化をつくる
時武:これからは、エンジニアに限らず開発組織全体がAIを自然に使いこなし、AIを前提とした開発プロセスが文化として根づいている状態を目指したいと思っています。
LegalOn Technologiesの面白いところは、AID CoEだけでなく、各チームの中にもAI活用に積極的なメンバーが多くいる点です。複数の場所で同時にAI活用が進んでいるので、規模が大きい組織で難しさもありますが、いろいろな専門性を持ったメンバーと議論しながら、自分の裁量で取り組みを進めていけます。
そうした中で、新しいやり方に対して斜に構えず、素直にアンラーニングできる人と一緒に働きたいです。AI時代の開発は技術だけでなく、コミュニケーションの取り方や周りを巻き込むスキルも重要になります。チーム内外の人と連携しながら動ける人は、特に力を発揮しやすいと思います。
技術はもちろん、そういったソフトスキルに自信がある人・チャレンジしてみたい人はぜひ話を聞きに来てください!
※AI戦略支援SaaS「Findy Team+」のサービス詳細は、以下よりご覧いただけます。
https://jp.findy-team.io/






