2025-11-20

KINTOテクノロジーズ「Vibe Coding Week」でサイクルタイム35.5%改善!AI活用で見えた「次なる課題」とは?

KINTOテクノロジーズ「Vibe Coding Week」でサイクルタイム35.5%改善!AI活用で見えた「次なる課題」とは?

目次

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サマリー

AI活用の狙いトップダウンの「AIファースト」方針に対し、現場の「AI不信」や中間管理職の心理的障壁を払拭すること。AI活用を「当然のように使う」文化を醸成するための「布教活動」として、成功事例を作ることを目指した。
Vibe Coding Week実施の背景現場のAI活用への心理的障壁を下げ、成功事例を作るため。また、横串組織として今後のAI施策を推進する「仲間」(アーリーアダプター)を見つける狙いもあった。参加を促すため、勉強会や「祭り感」の演出も行った。
Findy Team+による検証方法イベント参加者のグループをFindy Team+上に作成。イベント期間中にAIを使用したプルリクエストと、それ以外の期間のプルリクエストの「サイクルタイム」を比較検証した。
定量的成果サイクルタイム全体で平均35.5%の改善を達成。特に「コミット → オープン」(実装着手からPR作成まで)の時間は54.5%と大幅に短縮した。
定性的な変化「コードを書くのが速くなった」という現場の体感が、定量データ(コミット → オープン短縮)と一致した。また、各チームが「AIをどう使うと速く・安全に進むか」の勘所を掴めたことも収穫だった。
顕在化した課題「オープン→レビュー」(PR作成からレビュー開始まで)の時間が234.1%と大幅に悪化。AI導入で実装速度が上がった結果、レビュー担当者の不明確さやタスク逼迫といった既存の運用フローが、新たなボトルネックとして露呈した。
今後の展望レビューのボトルネック解消に向け、「PRとレビュー運用の標準化」(SLA設定など)、「レビューの“型”の共通化」、「プロンプト作法のガイド整備」、「環境整備」を進める。散発的な成功例を「会社全体のナレッジ」へ昇華させ、AIファーストの実現を加速させる。

トヨタグループのモビリティサービス「KINTO」をはじめとする技術開発を担うKINTOテクノロジーズ株式会社は「AIファースト」を掲げ、全社的なAI活用やAI駆動開発を強力に推進しています。
しかし、その裏では「AIを信用できない」という現場の声や、ツール導入に対する中間管理職の心理的障壁も存在していた。

この状況を打破すべく、同社はフロントエンドやバックエンド、フルスタック、QA、SREなど開発組織の多様な職種を巻き込んだ「Vibe Coding Week 2025 Summer」を開催。Findy Team+を用いてAI導入・活用の効果検証を試みました。
その結果、サイクルタイムは平均で35.5%、「コミット→オープン」は平均54.5%改善という大きな成果を上げた一方で、「オープン→レビュー」の時間が234.1%悪化するという新たなボトルネックも露呈しました。

本記事では、「Vibe Coding Week」を通して、AIを設計・実装・レビューに当て込み、現場での適用効果を検証して、定量的な数値から見えた改善と新たなボトルネックや、定性評価や振り返りから見えた“仕組み化”の壁などをご紹介します。

インタビュイー

KINTOテクノロジーズ株式会社
モバイルアプリ開発部 アシスタントマネージャー
日野森 寛也 氏(エンジニアとしてVibe Coding Weekを企画運営/参加)
【略歴】
フィーチャーフォン向けのゲーム開発からモバイル業界に携わり、スマートフォンの登場をきっかけにiOSエンジニアへと転向。その後、10年以上の経験を積み2021年7月にKINTOテクノロジーズへと入社。KINTOテクノロジーズにおけるモバイルアプリ領域の内製化に、初期から関わっている。

KINTOテクノロジーズ株式会社
コーポレートIT部 AIファーストG 生成AIエバンジェリスト
和田 颯馬 氏(AI活用推進者としてVibe Coding Weekを企画運営)
【略歴】
大学でITの社会実装を扱う社会情報学を専攻。製造業のIT部門で、生産管理システムの運用管理に携わり、データサイエンスを用いた機能追加の企画・要件定義を経験。2022年2月にKINTOテクノロジーズ入社後は、データサイエンティストとして分析レポート作成や推薦アルゴリズム開発に従事。2024年からは生成AIエバンジェリストとして、社内外の生成AI利活用を推進している。

KINTOテクノロジーズ株式会社とAIファーストグループについて教えてください

和田:KINTOテクノロジーズは、トヨタグループにおいて「KINTO」をはじめとするモビリティサービスの技術開発・運用を担っています。
1年半ほど前に立ち上がった「AIファーストグループ」では 、全社的な生成AIの利活用推進や、各プロダクトチームから「AIを使いたい」と相談があった際の技術支援、例えばPOC(概念実証)やプロトタイピングなどを実施しています。

AIツール活用の目的や目標について教えてください

和田:副社長の景山から「AIファースト」という強いメッセージがトップダウンで出ており、会社としてAI活用への市民権は比較的ある方だと思います。
トップダウンの方針があっても、現場への浸透はそう簡単ではありませんでした。
中間管理職の立場からすると、「本当にメンバーにツールを渡していいんだろうか」という心理的な抵抗感は存在していました。

和田:「Vibe Coding Week」の企画を始めた5月〜6月頃は、まだメンバーの中にも「AIを信用できない」という声が少なからずありました。
そうした障壁があった中でも、まずは「使ったら本当にいいことがある」という成功事例を社内で作りたかった。
ツール利用への心理的な障壁をなるべく下げて、「当然のように使う」文化を醸成することが第一の目的でした。
まさに、AI活用のための「布教活動」の一環、というのが「Vibe Coding Week」の当初の狙いでした。

なぜ「Vibe Coding Week」を行おうと思われたのでしょうか?

日野森:もともとは「(AI活用で)何かやりたいな」とボソッとつぶやいたのがきっかけでした。
和田:横串組織の立場から全社的なイベントとして推進しました。横串組織としては、先ほどの「成功事例作り」に加えて、もう一つ大きな狙いがありました。
それは、今後のAI施策を一緒に進めてくれる「仲間」を見つけることです。
新しい技術を導入する際、キャズム理論でいうイノベーターやアーリーアダプターをいかに見つけるかが本当に重要です。
今回、全社に「イベントやりませんか」と声をかけ、社員の10%強が手を挙げて参加してくれました。
この前向きな人たちを特定できたこと自体が、横串組織としては大きな成果でした。

和田:参加を促すために、トップ層を引き上げるより、ボトムからミドルの層の裾野を広げることを意識しました。
「Vibe Coding Week」の企画初期から、無理に人数を増やすのではなく、「参加してくれた1〜2割の人に、なるべく楽しんでもらう」という方針でしたので、本番の1週間前を「勉強ウィーク」と位置づけ、Cloud CodeやGitHub Copilotなどのヘビーユーザーに使い方を聞きまくる会を開催し、助走期間を設けました。

日野森:また、AIツールへの忌避感を払拭するために、クリエイティブチームに協力してもらい、予告動画やオープニング、エンディングムービーもAIで作成しました。
「祭り感」を大事にして、導入からブーストをかける仕掛けを意識しました。
(Vibe Coding Week 2025 Summerのオープニング・エンディングムービーの一部スクリーンショット)

「Vibe Coding Week」でのFindy Team+活用や、得られた定量的な効果や変化について教えて下さい

日野森:まず、今回は「Findy Team+」のサイクルタイム比較をメインで活用しました。
Vibe Coding Weekの参加メンバーでFindy Team+上にグループを作成し、イベント期間中にAIを使ったプルリクと、それ以外の期間のプルリクの数値を比較しました。

日野森:定量的なレポートに対して、まず経営層に対し報告したのですが、副社長・景山からは「すごいいいデータ取れてよかったね、どんどん次やっていこう」と上層部の方にも好意的に受け取ってもらい、非常にポジティブなフィードバックをもらいました。
このFindy Team+で可視化された定量データは、客観的な説明資料として非常に役立ちました。
やはり社長・副社長といった経営層への発信として、こうした「開発生産性」や「AI導入の投資対効果」を示す定量的なデータは非常に効果的です。

【定量的な効果や変化について】

日野森:Findy Team+でサイクルタイムを比較した結果、まず全体のサイクルタイム平均値が159.8時間から103.1時間へと、平均 35.5%改善 しました。

サイクルタイムのフェーズVibe CodingしたVibe Codingしていない差分効果(%)
コミット → オープン53.7117.9-64.2-54.5%
オープン → レビュー30.49.1+21.3+234.1%
レビュー → アプルーブ13.526.7-13.2-49.4%
アプルーブ → マージ5.56.1-0.6-9.8%
サイクルタイム平均値103.1159.8-56.7-35.5%

日野森:特に効果が出たプロセスは、「コミット → オープン」、つまり実装着手からプルリクを作成するまでの時間です。
これが117.9時間から53.7時間へと、 54.5%の大幅短縮 を達成しました。
また、一度レビューが始まってしまえば「レビュー → アプルーブ」も26.7時間から13.5時間へと 49.4%短縮 しており 、レビュー効率そのものは上がったことが分かりました。

日野森:この表はVibe Coding Weekに参加したすべてのメンバーのサイクルタイムを比較したものです。
Vibe Codingした方はPRにAIラベルが付いているものだけを抽出、Vibe Codingしてない方はそれ以外のPRを集めた平均値になります。

【Findy Team+で見たVibe Coding Week前のサイクルタイム平均値】

【Findy Team+で見たVibe Coding Week後のサイクルタイム平均値

【フェーズごとの特徴】

サイクルタイムのフェーズ時間特徴
コミット → オープン64.2時間短縮(-54.5%)プルリクを素早くオープンできている。コーディングやタスク着手スピードが上がった。
オープン → レビュー21.3時間遅延(+234.1%)PRが出た後、レビューに入るまでの待ち時間が大幅に悪化。
レビュー → アプルーブ13.2時間短縮(-49.4%)レビューが始まれば承認までのスピードは大幅に改善。レビュー効率そのものは上がった。
アプルーブ → マージ0.6時間短縮(-9.8%)大きな差はないが、やや改善。

定量面で大きな成果が出た一方で、定性面(いわゆる開発者体験)での変化はありましたか?

日野森:定性的な振り返りでも、「コードを書くのが速くなった」というポジティブな意見は、参加者の共通認識でした。
Findy Team+の「コミット → オープン 54.5%減」という数字と、現場の体感が一致した形です。
また、「“AIをどう使うと速く・安全に・破綻なく進むか”の勘所」を、各チームが掴めたことも大きな収穫でした。

日野森:また、「セルフレビューの頻度が高まり、レビューという行為が重要度が増していることに疲労感を覚えている」という世間で言われているマイナス意見を取得できたのも成果の一つだと思っています。

Findy Team+の結果から見えた「新たな課題」があったとのことでしたがどのような点になりますか?

日野森:Findy Team+のデータは、良いことばかりではなく、新たな課題も浮き彫りになってきました。
「オープン → レビュー」、つまりプルリクがオープンされてからレビューが開始されるまでの時間が、9.1時間から30.4時間へと、実に 234.1%も悪化 していたんです。

日野森:定性評価でも「レビューコストがかかっている」という点が指摘されていました。
そこでヒアリングを進めると、原因は「イベント前からある別タスクの影響でマージできない」、「“レビュー誰すんねん問題”(担当者が不明確)」、「慢性的なタスク逼迫でレビュー時間が取れない」といったものでした。

日野森:つまり、AI利用とは直接関係のない、既存の運用フローが原因だったと推測できます。
まさに、AIによって「コミット → オープン」の生産性が劇的に上がった結果、これまで潜在化していた既存のレビュープロセスが、新たなボトルネックとして炙り出された形ですね。

今後の展望・期待

日野森:1つ目は、「PRとレビュー運用の標準化」です。
例えば、PRの分割基準(差分行数やファイル数など)を明文化したり 、レビュー担当者の自動割り当てやSLA(24h以内の初回コメント)を設定しSlackで自動リマインドする など、レビューを開始する仕組み化を進めます。

日野森:2つ目は、「レビューの“型”の共通化」です。
標準のレビュー用プロンプトセットを配布したり 、レビュー観点(正確性、セキュリティ、可読性など)を固定化してチェックリスト化することで、レビューの属人性を排除します。

日野森:3つ目は、「プロンプト作法のスタートアップガイドを全員デフォルトにしていくこと」です。
ワンページ版を配布し、「目的/前提/制約 → 出力型(例:Explanatory, JSON)→ 段階(plan→edit)」といった構成を基本とします。
また、Claude Code, Devin, GitHub Copilotのツール代表者を各ツール3名ずつ程度集め、月一回ほどのディスカッションで内容を決めていきます。
ツールの更新内容のハイライトもまとめられたらいいですね。
PRレビュー依頼も、「PRリンク、対象範囲、レビュー順序、期待する出力形式を最初に明示する」といった定型化を進めます。

日野森:4つ目は、「環境整備」です。
アカウント運用を一本化し、Enterprise/Team前提でレート制限・決裁フロー・監査ログを整理していきたいと思います。

和田:今回のVibe Coding Weekで得られた「散発的な成功例」を、こうした仕組み化によって「会社全体のナレッジ」へ昇華させることが次のステップだと考えています。

和田:今後の展開として、「コーディングウィークの次はレビューウィークか?」なんて話も出ています。経営層からも「どんどん次をやっていこう」という声をもらっています。
「AIファースト」の実現に向け、今回のFindy Team+による「AIの効果検証」の結果を土台にして、次の取り組みを加速させていきます。

最後に

AIを前提とした開発体制への変革は、AIツールをただ導入するだけでは終わることはありません。
導入したAIツールがどのように活用され、開発組織にどのような影響をもたらしたのかを数値で可視化し、定量的に測定することが重要です。
また、AIの導入効果を測定することは、社内での投資対効果を示す材料として必要不可欠な情報となります。
あなたの組織では、AI活用に対して定量的に測ることができていますか?

サマリー

AI活用の狙いトップダウンの「AIファースト」方針に対し、現場の「AI不信」や中間管理職の心理的障壁を払拭すること。AI活用を「当然のように使う」文化を醸成するための「布教活動」として、成功事例を作ることを目指した。
Vibe Coding Week実施の背景現場のAI活用への心理的障壁を下げ、成功事例を作るため。また、横串組織として今後のAI施策を推進する「仲間」(アーリーアダプター)を見つける狙いもあった。参加を促すため、勉強会や「祭り感」の演出も行った。
Findy Team+による検証方法イベント参加者のグループをFindy Team+上に作成。イベント期間中にAIを使用したプルリクエストと、それ以外の期間のプルリクエストの「サイクルタイム」を比較検証した。
定量的成果サイクルタイム全体で平均35.5%の改善を達成。特に「コミット → オープン」(実装着手からPR作成まで)の時間は54.5%と大幅に短縮した。
定性的な変化「コードを書くのが速くなった」という現場の体感が、定量データ(コミット → オープン短縮)と一致した。また、各チームが「AIをどう使うと速く・安全に進むか」の勘所を掴めたことも収穫だった。
顕在化した課題「オープン→レビュー」(PR作成からレビュー開始まで)の時間が234.1%と大幅に悪化。AI導入で実装速度が上がった結果、レビュー担当者の不明確さやタスク逼迫といった既存の運用フローが、新たなボトルネックとして露呈した。
今後の展望レビューのボトルネック解消に向け、「PRとレビュー運用の標準化」(SLA設定など)、「レビューの“型”の共通化」、「プロンプト作法のガイド整備」、「環境整備」を進める。散発的な成功例を「会社全体のナレッジ」へ昇華させ、AIファーストの実現を加速させる。

トヨタグループのモビリティサービス「KINTO」をはじめとする技術開発を担うKINTOテクノロジーズ株式会社は「AIファースト」を掲げ、全社的なAI活用やAI駆動開発を強力に推進しています。
しかし、その裏では「AIを信用できない」という現場の声や、ツール導入に対する中間管理職の心理的障壁も存在していた。

この状況を打破すべく、同社はフロントエンドやバックエンド、フルスタック、QA、SREなど開発組織の多様な職種を巻き込んだ「Vibe Coding Week 2025 Summer」を開催。Findy Team+を用いてAI導入・活用の効果検証を試みました。
その結果、サイクルタイムは平均で35.5%、「コミット→オープン」は平均54.5%改善という大きな成果を上げた一方で、「オープン→レビュー」の時間が234.1%悪化するという新たなボトルネックも露呈しました。

本記事では、「Vibe Coding Week」を通して、AIを設計・実装・レビューに当て込み、現場での適用効果を検証して、定量的な数値から見えた改善と新たなボトルネックや、定性評価や振り返りから見えた“仕組み化”の壁などをご紹介します。

インタビュイー

KINTOテクノロジーズ株式会社
モバイルアプリ開発部 アシスタントマネージャー
日野森 寛也 氏(エンジニアとしてVibe Coding Weekを企画運営/参加)
【略歴】
フィーチャーフォン向けのゲーム開発からモバイル業界に携わり、スマートフォンの登場をきっかけにiOSエンジニアへと転向。その後、10年以上の経験を積み2021年7月にKINTOテクノロジーズへと入社。KINTOテクノロジーズにおけるモバイルアプリ領域の内製化に、初期から関わっている。

KINTOテクノロジーズ株式会社
コーポレートIT部 AIファーストG 生成AIエバンジェリスト
和田 颯馬 氏(AI活用推進者としてVibe Coding Weekを企画運営)
【略歴】
大学でITの社会実装を扱う社会情報学を専攻。製造業のIT部門で、生産管理システムの運用管理に携わり、データサイエンスを用いた機能追加の企画・要件定義を経験。2022年2月にKINTOテクノロジーズ入社後は、データサイエンティストとして分析レポート作成や推薦アルゴリズム開発に従事。2024年からは生成AIエバンジェリストとして、社内外の生成AI利活用を推進している。

KINTOテクノロジーズ株式会社とAIファーストグループについて教えてください

和田:KINTOテクノロジーズは、トヨタグループにおいて「KINTO」をはじめとするモビリティサービスの技術開発・運用を担っています。
1年半ほど前に立ち上がった「AIファーストグループ」では 、全社的な生成AIの利活用推進や、各プロダクトチームから「AIを使いたい」と相談があった際の技術支援、例えばPOC(概念実証)やプロトタイピングなどを実施しています。

AIツール活用の目的や目標について教えてください

和田:副社長の景山から「AIファースト」という強いメッセージがトップダウンで出ており、会社としてAI活用への市民権は比較的ある方だと思います。
トップダウンの方針があっても、現場への浸透はそう簡単ではありませんでした。
中間管理職の立場からすると、「本当にメンバーにツールを渡していいんだろうか」という心理的な抵抗感は存在していました。

和田:「Vibe Coding Week」の企画を始めた5月〜6月頃は、まだメンバーの中にも「AIを信用できない」という声が少なからずありました。
そうした障壁があった中でも、まずは「使ったら本当にいいことがある」という成功事例を社内で作りたかった。
ツール利用への心理的な障壁をなるべく下げて、「当然のように使う」文化を醸成することが第一の目的でした。
まさに、AI活用のための「布教活動」の一環、というのが「Vibe Coding Week」の当初の狙いでした。

なぜ「Vibe Coding Week」を行おうと思われたのでしょうか?

日野森:もともとは「(AI活用で)何かやりたいな」とボソッとつぶやいたのがきっかけでした。
和田:横串組織の立場から全社的なイベントとして推進しました。横串組織としては、先ほどの「成功事例作り」に加えて、もう一つ大きな狙いがありました。
それは、今後のAI施策を一緒に進めてくれる「仲間」を見つけることです。
新しい技術を導入する際、キャズム理論でいうイノベーターやアーリーアダプターをいかに見つけるかが本当に重要です。
今回、全社に「イベントやりませんか」と声をかけ、社員の10%強が手を挙げて参加してくれました。
この前向きな人たちを特定できたこと自体が、横串組織としては大きな成果でした。

和田:参加を促すために、トップ層を引き上げるより、ボトムからミドルの層の裾野を広げることを意識しました。
「Vibe Coding Week」の企画初期から、無理に人数を増やすのではなく、「参加してくれた1〜2割の人に、なるべく楽しんでもらう」という方針でしたので、本番の1週間前を「勉強ウィーク」と位置づけ、Cloud CodeやGitHub Copilotなどのヘビーユーザーに使い方を聞きまくる会を開催し、助走期間を設けました。

日野森:また、AIツールへの忌避感を払拭するために、クリエイティブチームに協力してもらい、予告動画やオープニング、エンディングムービーもAIで作成しました。
「祭り感」を大事にして、導入からブーストをかける仕掛けを意識しました。
(Vibe Coding Week 2025 Summerのオープニング・エンディングムービーの一部スクリーンショット)

「Vibe Coding Week」でのFindy Team+活用や、得られた定量的な効果や変化について教えて下さい

日野森:まず、今回は「Findy Team+」のサイクルタイム比較をメインで活用しました。
Vibe Coding Weekの参加メンバーでFindy Team+上にグループを作成し、イベント期間中にAIを使ったプルリクと、それ以外の期間のプルリクの数値を比較しました。

日野森:定量的なレポートに対して、まず経営層に対し報告したのですが、副社長・景山からは「すごいいいデータ取れてよかったね、どんどん次やっていこう」と上層部の方にも好意的に受け取ってもらい、非常にポジティブなフィードバックをもらいました。
このFindy Team+で可視化された定量データは、客観的な説明資料として非常に役立ちました。
やはり社長・副社長といった経営層への発信として、こうした「開発生産性」や「AI導入の投資対効果」を示す定量的なデータは非常に効果的です。

【定量的な効果や変化について】

日野森:Findy Team+でサイクルタイムを比較した結果、まず全体のサイクルタイム平均値が159.8時間から103.1時間へと、平均 35.5%改善 しました。

サイクルタイムのフェーズVibe CodingしたVibe Codingしていない差分効果(%)
コミット → オープン53.7117.9-64.2-54.5%
オープン → レビュー30.49.1+21.3+234.1%
レビュー → アプルーブ13.526.7-13.2-49.4%
アプルーブ → マージ5.56.1-0.6-9.8%
サイクルタイム平均値103.1159.8-56.7-35.5%

日野森:特に効果が出たプロセスは、「コミット → オープン」、つまり実装着手からプルリクを作成するまでの時間です。
これが117.9時間から53.7時間へと、 54.5%の大幅短縮 を達成しました。
また、一度レビューが始まってしまえば「レビュー → アプルーブ」も26.7時間から13.5時間へと 49.4%短縮 しており 、レビュー効率そのものは上がったことが分かりました。

日野森:この表はVibe Coding Weekに参加したすべてのメンバーのサイクルタイムを比較したものです。
Vibe Codingした方はPRにAIラベルが付いているものだけを抽出、Vibe Codingしてない方はそれ以外のPRを集めた平均値になります。

【Findy Team+で見たVibe Coding Week前のサイクルタイム平均値】

【Findy Team+で見たVibe Coding Week後のサイクルタイム平均値

【フェーズごとの特徴】

サイクルタイムのフェーズ時間特徴
コミット → オープン64.2時間短縮(-54.5%)プルリクを素早くオープンできている。コーディングやタスク着手スピードが上がった。
オープン → レビュー21.3時間遅延(+234.1%)PRが出た後、レビューに入るまでの待ち時間が大幅に悪化。
レビュー → アプルーブ13.2時間短縮(-49.4%)レビューが始まれば承認までのスピードは大幅に改善。レビュー効率そのものは上がった。
アプルーブ → マージ0.6時間短縮(-9.8%)大きな差はないが、やや改善。

定量面で大きな成果が出た一方で、定性面(いわゆる開発者体験)での変化はありましたか?

日野森:定性的な振り返りでも、「コードを書くのが速くなった」というポジティブな意見は、参加者の共通認識でした。
Findy Team+の「コミット → オープン 54.5%減」という数字と、現場の体感が一致した形です。
また、「“AIをどう使うと速く・安全に・破綻なく進むか”の勘所」を、各チームが掴めたことも大きな収穫でした。

日野森:また、「セルフレビューの頻度が高まり、レビューという行為が重要度が増していることに疲労感を覚えている」という世間で言われているマイナス意見を取得できたのも成果の一つだと思っています。

Findy Team+の結果から見えた「新たな課題」があったとのことでしたがどのような点になりますか?

日野森:Findy Team+のデータは、良いことばかりではなく、新たな課題も浮き彫りになってきました。
「オープン → レビュー」、つまりプルリクがオープンされてからレビューが開始されるまでの時間が、9.1時間から30.4時間へと、実に 234.1%も悪化 していたんです。

日野森:定性評価でも「レビューコストがかかっている」という点が指摘されていました。
そこでヒアリングを進めると、原因は「イベント前からある別タスクの影響でマージできない」、「“レビュー誰すんねん問題”(担当者が不明確)」、「慢性的なタスク逼迫でレビュー時間が取れない」といったものでした。

日野森:つまり、AI利用とは直接関係のない、既存の運用フローが原因だったと推測できます。
まさに、AIによって「コミット → オープン」の生産性が劇的に上がった結果、これまで潜在化していた既存のレビュープロセスが、新たなボトルネックとして炙り出された形ですね。

今後の展望・期待

日野森:1つ目は、「PRとレビュー運用の標準化」です。
例えば、PRの分割基準(差分行数やファイル数など)を明文化したり 、レビュー担当者の自動割り当てやSLA(24h以内の初回コメント)を設定しSlackで自動リマインドする など、レビューを開始する仕組み化を進めます。

日野森:2つ目は、「レビューの“型”の共通化」です。
標準のレビュー用プロンプトセットを配布したり 、レビュー観点(正確性、セキュリティ、可読性など)を固定化してチェックリスト化することで、レビューの属人性を排除します。

日野森:3つ目は、「プロンプト作法のスタートアップガイドを全員デフォルトにしていくこと」です。
ワンページ版を配布し、「目的/前提/制約 → 出力型(例:Explanatory, JSON)→ 段階(plan→edit)」といった構成を基本とします。
また、Claude Code, Devin, GitHub Copilotのツール代表者を各ツール3名ずつ程度集め、月一回ほどのディスカッションで内容を決めていきます。
ツールの更新内容のハイライトもまとめられたらいいですね。
PRレビュー依頼も、「PRリンク、対象範囲、レビュー順序、期待する出力形式を最初に明示する」といった定型化を進めます。

日野森:4つ目は、「環境整備」です。
アカウント運用を一本化し、Enterprise/Team前提でレート制限・決裁フロー・監査ログを整理していきたいと思います。

和田:今回のVibe Coding Weekで得られた「散発的な成功例」を、こうした仕組み化によって「会社全体のナレッジ」へ昇華させることが次のステップだと考えています。

和田:今後の展開として、「コーディングウィークの次はレビューウィークか?」なんて話も出ています。経営層からも「どんどん次をやっていこう」という声をもらっています。
「AIファースト」の実現に向け、今回のFindy Team+による「AIの効果検証」の結果を土台にして、次の取り組みを加速させていきます。

最後に

AIを前提とした開発体制への変革は、AIツールをただ導入するだけでは終わることはありません。
導入したAIツールがどのように活用され、開発組織にどのような影響をもたらしたのかを数値で可視化し、定量的に測定することが重要です。
また、AIの導入効果を測定することは、社内での投資対効果を示す材料として必要不可欠な情報となります。
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2025-11-20AI活用

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AI活用の狙いトップダウンの「AIファースト」方針に対し、現場の「AI不信」や中間管理職の心理的障壁を払拭すること。AI活用を「当然のように使う」文化を醸成するための「布教活動」として、成功事例を作ることを目指した。
Vibe Coding Week実施の背景現場のAI活用への心理的障壁を下げ、成功事例を作るため。また、横串組織として今後のAI施策を推進する「仲間」(アーリーアダプター)を見つける狙いもあった。参加を促すため、勉強会や「祭り感」の演出も行った。
Findy Team+による検証方法イベント参加者のグループをFindy Team+上に作成。イベント期間中にAIを使用したプルリクエストと、それ以外の期間のプルリクエストの「サイクルタイム」を比較検証した。
定量的成果サイクルタイム全体で平均35.5%の改善を達成。特に「コミット → オープン」(実装着手からPR作成まで)の時間は54.5%と大幅に短縮した。
定性的な変化「コードを書くのが速くなった」という現場の体感が、定量データ(コミット → オープン短縮)と一致した。また、各チームが「AIをどう使うと速く・安全に進むか」の勘所を掴めたことも収穫だった。
顕在化した課題「オープン→レビュー」(PR作成からレビュー開始まで)の時間が234.1%と大幅に悪化。AI導入で実装速度が上がった結果、レビュー担当者の不明確さやタスク逼迫といった既存の運用フローが、新たなボトルネックとして露呈した。
今後の展望レビューのボトルネック解消に向け、「PRとレビュー運用の標準化」(SLA設定など)、「レビューの“型”の共通化」、「プロンプト作法のガイド整備」、「環境整備」を進める。散発的な成功例を「会社全体のナレッジ」へ昇華させ、AIファーストの実現を加速させる。

トヨタグループのモビリティサービス「KINTO」をはじめとする技術開発を担うKINTOテクノロジーズ株式会社は「AIファースト」を掲げ、全社的なAI活用やAI駆動開発を強力に推進しています。
しかし、その裏では「AIを信用できない」という現場の声や、ツール導入に対する中間管理職の心理的障壁も存在していた。

この状況を打破すべく、同社はフロントエンドやバックエンド、フルスタック、QA、SREなど開発組織の多様な職種を巻き込んだ「Vibe Coding Week 2025 Summer」を開催。Findy Team+を用いてAI導入・活用の効果検証を試みました。
その結果、サイクルタイムは平均で35.5%、「コミット→オープン」は平均54.5%改善という大きな成果を上げた一方で、「オープン→レビュー」の時間が234.1%悪化するという新たなボトルネックも露呈しました。

本記事では、「Vibe Coding Week」を通して、AIを設計・実装・レビューに当て込み、現場での適用効果を検証して、定量的な数値から見えた改善と新たなボトルネックや、定性評価や振り返りから見えた“仕組み化”の壁などをご紹介します。

インタビュイー

KINTOテクノロジーズ株式会社
モバイルアプリ開発部 アシスタントマネージャー
日野森 寛也 氏(エンジニアとしてVibe Coding Weekを企画運営/参加)
【略歴】
フィーチャーフォン向けのゲーム開発からモバイル業界に携わり、スマートフォンの登場をきっかけにiOSエンジニアへと転向。その後、10年以上の経験を積み2021年7月にKINTOテクノロジーズへと入社。KINTOテクノロジーズにおけるモバイルアプリ領域の内製化に、初期から関わっている。

KINTOテクノロジーズ株式会社
コーポレートIT部 AIファーストG 生成AIエバンジェリスト
和田 颯馬 氏(AI活用推進者としてVibe Coding Weekを企画運営)
【略歴】
大学でITの社会実装を扱う社会情報学を専攻。製造業のIT部門で、生産管理システムの運用管理に携わり、データサイエンスを用いた機能追加の企画・要件定義を経験。2022年2月にKINTOテクノロジーズ入社後は、データサイエンティストとして分析レポート作成や推薦アルゴリズム開発に従事。2024年からは生成AIエバンジェリストとして、社内外の生成AI利活用を推進している。

KINTOテクノロジーズ株式会社とAIファーストグループについて教えてください

和田:KINTOテクノロジーズは、トヨタグループにおいて「KINTO」をはじめとするモビリティサービスの技術開発・運用を担っています。
1年半ほど前に立ち上がった「AIファーストグループ」では 、全社的な生成AIの利活用推進や、各プロダクトチームから「AIを使いたい」と相談があった際の技術支援、例えばPOC(概念実証)やプロトタイピングなどを実施しています。

AIツール活用の目的や目標について教えてください

和田:副社長の景山から「AIファースト」という強いメッセージがトップダウンで出ており、会社としてAI活用への市民権は比較的ある方だと思います。
トップダウンの方針があっても、現場への浸透はそう簡単ではありませんでした。
中間管理職の立場からすると、「本当にメンバーにツールを渡していいんだろうか」という心理的な抵抗感は存在していました。

和田:「Vibe Coding Week」の企画を始めた5月〜6月頃は、まだメンバーの中にも「AIを信用できない」という声が少なからずありました。
そうした障壁があった中でも、まずは「使ったら本当にいいことがある」という成功事例を社内で作りたかった。
ツール利用への心理的な障壁をなるべく下げて、「当然のように使う」文化を醸成することが第一の目的でした。
まさに、AI活用のための「布教活動」の一環、というのが「Vibe Coding Week」の当初の狙いでした。

なぜ「Vibe Coding Week」を行おうと思われたのでしょうか?

日野森:もともとは「(AI活用で)何かやりたいな」とボソッとつぶやいたのがきっかけでした。
和田:横串組織の立場から全社的なイベントとして推進しました。横串組織としては、先ほどの「成功事例作り」に加えて、もう一つ大きな狙いがありました。
それは、今後のAI施策を一緒に進めてくれる「仲間」を見つけることです。
新しい技術を導入する際、キャズム理論でいうイノベーターやアーリーアダプターをいかに見つけるかが本当に重要です。
今回、全社に「イベントやりませんか」と声をかけ、社員の10%強が手を挙げて参加してくれました。
この前向きな人たちを特定できたこと自体が、横串組織としては大きな成果でした。

和田:参加を促すために、トップ層を引き上げるより、ボトムからミドルの層の裾野を広げることを意識しました。
「Vibe Coding Week」の企画初期から、無理に人数を増やすのではなく、「参加してくれた1〜2割の人に、なるべく楽しんでもらう」という方針でしたので、本番の1週間前を「勉強ウィーク」と位置づけ、Cloud CodeやGitHub Copilotなどのヘビーユーザーに使い方を聞きまくる会を開催し、助走期間を設けました。

日野森:また、AIツールへの忌避感を払拭するために、クリエイティブチームに協力してもらい、予告動画やオープニング、エンディングムービーもAIで作成しました。
「祭り感」を大事にして、導入からブーストをかける仕掛けを意識しました。
(Vibe Coding Week 2025 Summerのオープニング・エンディングムービーの一部スクリーンショット)

「Vibe Coding Week」でのFindy Team+活用や、得られた定量的な効果や変化について教えて下さい

日野森:まず、今回は「Findy Team+」のサイクルタイム比較をメインで活用しました。
Vibe Coding Weekの参加メンバーでFindy Team+上にグループを作成し、イベント期間中にAIを使ったプルリクと、それ以外の期間のプルリクの数値を比較しました。

日野森:定量的なレポートに対して、まず経営層に対し報告したのですが、副社長・景山からは「すごいいいデータ取れてよかったね、どんどん次やっていこう」と上層部の方にも好意的に受け取ってもらい、非常にポジティブなフィードバックをもらいました。
このFindy Team+で可視化された定量データは、客観的な説明資料として非常に役立ちました。
やはり社長・副社長といった経営層への発信として、こうした「開発生産性」や「AI導入の投資対効果」を示す定量的なデータは非常に効果的です。

【定量的な効果や変化について】

日野森:Findy Team+でサイクルタイムを比較した結果、まず全体のサイクルタイム平均値が159.8時間から103.1時間へと、平均 35.5%改善 しました。

サイクルタイムのフェーズVibe CodingしたVibe Codingしていない差分効果(%)
コミット → オープン53.7117.9-64.2-54.5%
オープン → レビュー30.49.1+21.3+234.1%
レビュー → アプルーブ13.526.7-13.2-49.4%
アプルーブ → マージ5.56.1-0.6-9.8%
サイクルタイム平均値103.1159.8-56.7-35.5%

日野森:特に効果が出たプロセスは、「コミット → オープン」、つまり実装着手からプルリクを作成するまでの時間です。
これが117.9時間から53.7時間へと、 54.5%の大幅短縮 を達成しました。
また、一度レビューが始まってしまえば「レビュー → アプルーブ」も26.7時間から13.5時間へと 49.4%短縮 しており 、レビュー効率そのものは上がったことが分かりました。

日野森:この表はVibe Coding Weekに参加したすべてのメンバーのサイクルタイムを比較したものです。
Vibe Codingした方はPRにAIラベルが付いているものだけを抽出、Vibe Codingしてない方はそれ以外のPRを集めた平均値になります。

【Findy Team+で見たVibe Coding Week前のサイクルタイム平均値】

【Findy Team+で見たVibe Coding Week後のサイクルタイム平均値

【フェーズごとの特徴】

サイクルタイムのフェーズ時間特徴
コミット → オープン64.2時間短縮(-54.5%)プルリクを素早くオープンできている。コーディングやタスク着手スピードが上がった。
オープン → レビュー21.3時間遅延(+234.1%)PRが出た後、レビューに入るまでの待ち時間が大幅に悪化。
レビュー → アプルーブ13.2時間短縮(-49.4%)レビューが始まれば承認までのスピードは大幅に改善。レビュー効率そのものは上がった。
アプルーブ → マージ0.6時間短縮(-9.8%)大きな差はないが、やや改善。

定量面で大きな成果が出た一方で、定性面(いわゆる開発者体験)での変化はありましたか?

日野森:定性的な振り返りでも、「コードを書くのが速くなった」というポジティブな意見は、参加者の共通認識でした。
Findy Team+の「コミット → オープン 54.5%減」という数字と、現場の体感が一致した形です。
また、「“AIをどう使うと速く・安全に・破綻なく進むか”の勘所」を、各チームが掴めたことも大きな収穫でした。

日野森:また、「セルフレビューの頻度が高まり、レビューという行為が重要度が増していることに疲労感を覚えている」という世間で言われているマイナス意見を取得できたのも成果の一つだと思っています。

Findy Team+の結果から見えた「新たな課題」があったとのことでしたがどのような点になりますか?

日野森:Findy Team+のデータは、良いことばかりではなく、新たな課題も浮き彫りになってきました。
「オープン → レビュー」、つまりプルリクがオープンされてからレビューが開始されるまでの時間が、9.1時間から30.4時間へと、実に 234.1%も悪化 していたんです。

日野森:定性評価でも「レビューコストがかかっている」という点が指摘されていました。
そこでヒアリングを進めると、原因は「イベント前からある別タスクの影響でマージできない」、「“レビュー誰すんねん問題”(担当者が不明確)」、「慢性的なタスク逼迫でレビュー時間が取れない」といったものでした。

日野森:つまり、AI利用とは直接関係のない、既存の運用フローが原因だったと推測できます。
まさに、AIによって「コミット → オープン」の生産性が劇的に上がった結果、これまで潜在化していた既存のレビュープロセスが、新たなボトルネックとして炙り出された形ですね。

今後の展望・期待

日野森:1つ目は、「PRとレビュー運用の標準化」です。
例えば、PRの分割基準(差分行数やファイル数など)を明文化したり 、レビュー担当者の自動割り当てやSLA(24h以内の初回コメント)を設定しSlackで自動リマインドする など、レビューを開始する仕組み化を進めます。

日野森:2つ目は、「レビューの“型”の共通化」です。
標準のレビュー用プロンプトセットを配布したり 、レビュー観点(正確性、セキュリティ、可読性など)を固定化してチェックリスト化することで、レビューの属人性を排除します。

日野森:3つ目は、「プロンプト作法のスタートアップガイドを全員デフォルトにしていくこと」です。
ワンページ版を配布し、「目的/前提/制約 → 出力型(例:Explanatory, JSON)→ 段階(plan→edit)」といった構成を基本とします。
また、Claude Code, Devin, GitHub Copilotのツール代表者を各ツール3名ずつ程度集め、月一回ほどのディスカッションで内容を決めていきます。
ツールの更新内容のハイライトもまとめられたらいいですね。
PRレビュー依頼も、「PRリンク、対象範囲、レビュー順序、期待する出力形式を最初に明示する」といった定型化を進めます。

日野森:4つ目は、「環境整備」です。
アカウント運用を一本化し、Enterprise/Team前提でレート制限・決裁フロー・監査ログを整理していきたいと思います。

和田:今回のVibe Coding Weekで得られた「散発的な成功例」を、こうした仕組み化によって「会社全体のナレッジ」へ昇華させることが次のステップだと考えています。

和田:今後の展開として、「コーディングウィークの次はレビューウィークか?」なんて話も出ています。経営層からも「どんどん次をやっていこう」という声をもらっています。
「AIファースト」の実現に向け、今回のFindy Team+による「AIの効果検証」の結果を土台にして、次の取り組みを加速させていきます。

最後に

AIを前提とした開発体制への変革は、AIツールをただ導入するだけでは終わることはありません。
導入したAIツールがどのように活用され、開発組織にどのような影響をもたらしたのかを数値で可視化し、定量的に測定することが重要です。
また、AIの導入効果を測定することは、社内での投資対効果を示す材料として必要不可欠な情報となります。
あなたの組織では、AI活用に対して定量的に測ることができていますか?

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